菊田さんから色々な記念日を教えてもらった時は、そんなものあるんだくらいにしか思ってなかったけど、今はプレゼントをあげるいいきっかけだと思えるようになった。
今日はオレンジのものを贈る日だから、最初は花を……と思っていたけど、日曜日だし彼女に内緒で買うのは難しいので断念した。じゃあオレンジ色の小物はどうかと思ったけど、意外と彼女は持っていない事を思い出す。持っていないからあげるのもアリだと思うが、あまり好きではない色だったらと思うと躊躇してしまう。
結局、散々悩んだ挙げ句、購入したのはオレンジのタルトだった。カスタードムースとオレンジを使ったさっぱりした風味と書いてあったので、これなら一緒に食べられるだろうと、通販で注文した。

「美味しいね。ありがとう、有古くん」
ニコニコとタルトを食べる彼女の顔を見て、俺も嬉しくなる。プレゼントを選ぶのがこんなに大変で、でもとても楽しいものだとは思わなかった。これもきっと彼女のことだからなんだろうな、と思う。
「明日、私も有古くんにオレンジのもの買ってくるね」
彼女も同じように悩んで選んでくれるのだろうか。そうだったらいいな、と願わずにはいられない。