コロッケの日
じゅわっという音が聞こえ、今夜は揚げ物だと分かった。
「天ぷらか?」
近くに言ってそう聞いてみると、
「残念、コロッケです」
と答えが返ってきた。
コロッケか……。嫌いじゃないが、まぁ、もう山菜の天ぷらの時期も終わるし、仕方ない。好物はまた来年の春までお預けだ。
じゅわじゅわとした揚げ物の音を聞きながら、彼女と話をしていると
「……ん?」
「あっ」
油の音が変わったのに気付くと同時に、彼女が小さく声をあげる。
「どうかしたか?」
「あー、コロッケ、破裂しちゃって……」
「はれつ……?」
彼女が言うには、家でコロッケを揚げると、中身が飛び出てしまうことがあるらしく、それを破裂というらしい。そもそもコロッケは買うもの、家で揚げるなんてしたことないから知らなかった。
話をしながら、彼女は破裂したコロッケを油からあげ、新しいものを入れている。
「食えるのか?」
「まぁ、中身ちょっと飛び出してますけど、普通に食べられますよ」
「なら問題ねぇな」
でも……と言い淀む彼女に、食べちまえば同じだろ、と笑う。
「そもそも見た目なんざ気にしねぇ」
「……都丹さんはそうでしたね」
彼女の笑った気配に、俺も笑い返した。


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