オムレツの日
「オムレツ食べたい」
唐突な私の言葉に不思議そうな顔を見せたキラウシだったけど、すぐに
「分かった」
と立ち上がった。私の思い付き発言にもすっかり慣れてしまっている。
「あのね、チーズの入ったやつ。あ、でもふわふわのも捨てがたい」
「どっちだ?」
どっちも食べたい。キラウシの作ったものは美味しいから。でも今は……。
「チーズの」
「ん、チーズのな」
やったと喜べば、キラウシは笑って、待ってろ、とすぐに取りかかってくれた。袖を捲りあげ、逞しい腕が露になるとちょっとドキドキしてしまう。
フライパンに溶いた卵とチーズを入れ、手早くかき混ぜ、半熟状態になったらフライパンの柄とは逆方向にまとめる。それから火から下ろして柄をとんとんと叩くと、綺麗なオムレツが出来た。いつも見ているけど、同じようにやっても私は上手く出来ず、スクランブルエッグで誤魔化してしまうんだけど。
「ほら、出来たぞ」
仕上げにケチャップをかけたら出来上がり。差し出されたオムレツには真っ赤なハートが描かれていた。
「珍しいね」
「たまにはいいだろ」
ちょっとだけ頬を染めたキラウシに、私はスプーンでオムレツを掬って差し出す。
「たまにはね」
そう言って笑えば、キラウシは仕方ないなと口を開けてくれた。


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