羊肉の日
「えっ、食べたことないんすか?」
「うん」
笑顔で頷く彼女に、俺は言葉を失った。
「だって地元じゃ売ってなかったもの。ジンギスカンはお店で食べるものだし、それ以前にそもそもお店もなかったし」
地元北海道では当たり前に食べられているジンギスカン。所変われば……とはよく言ったもので、彼女の地元では全くといっていい程馴染みのないもらしい。
「じゃ、じゃあ、俺、準備します。今日はジンギスカンにしましょう」
折角北海道に来て俺と一緒にいるんだ、彼女に美味しいジンギスカンを食べてもらいたい。俺の地元の味を知ってもらいたい。そして、普段ご飯の支度をしてもらっているから、たまには俺がやりたい。そんな思いから、俺は声を上げる。
「いいの?」
「勿論っす」
鍋は今日は亀蔵のところで借りようか、でも、思いきって買ってもいいかもしれない。肉は俺がよく買うスーパーで……いや、折角だから奮発して牧場に買いに行くか。
「ねえ、夏太郎くん」
「はい」
「折角だから、一緒に準備させて?」
俺がやってあげようと思っていたけど、一人より二人でやるのも楽しいことに気付く事が出来たのは、これがきっかけだった。


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