「姉さん」

「あ、一君おはよう」

おはようございます、と会釈してから席に着き綺麗に手を合わせいただきますと朝ご飯を食べ始めた。
我が家は共働きで両親とも家にいることが少なく、二人で家事の分担をしている。

「今日の味噌汁はさつま芋が入っているのですね…うん、美味しいです」

「も〜!!一君は褒めるの上手なんだから!」

本当の事ですから、と微笑む目の前の弟は身内ながらかなり整った顔をしていてモテると思う。ただ、彼女はいない。何度かできたことはあるがすぐに別れてしまう。


―弟は重度のシスコンなのだ。


何かあると姉さん、何もなくても姉さん、姉さん姉さん姉さん、デートの途中に「帰らなければ」と立ち上がったかと思えば「夕飯を作らなければ。姉さんが待っているのだ。ではまた明日。」と言って彼女をその場に置いていくような男なのである。
私でもそんな彼氏は嫌だ。

「む…もうこんな時間か。」

ご馳走様でしたと綺麗に手を合わせ挨拶する。どんな時でも礼儀作法を忘れない子なのだ。…私に関する時以外。

「では行ってきます」

「へいへい、帰りは何時?」

「いつもと同じ時間になると思います。買い物して帰るやもしれません」

「はーいりょーかい。行ってらっしゃい」

一君を見送った後は洗濯物を干して軽く掃除機をかけ出社。社が自営業のため他の社会人様よりかは遅くの出社なのだ。







「あ、トイレットペーパー切れるんだった」

一君にメールしとこ。はじめくん、帰りにトイレットペーパー買ってきてください、ナマエ…これでよし。


「姉さん、ただ今帰りました」

「一君おかえり!あっトイレットペーパーありがとね!あとひとつしかなくて焦ったよー」

「俺もたまたま財布を持っていて良かったです。あと、これ」

ポケットから出てきたのは手紙。中学生の女子が手紙交換をする時の様に可愛く小さく折られている。裏を見ると『ナマエちゃんへ 総司より(`ω´)』と小さく書かれていた。

「総司より預かったものです。中身を見せろと言ったのですがどうしても見るなと言われ、姉さん宛ということで俺も手が出せませんでした」

「そうなのか、総ちゃんが私に手紙なんて二人が小学生以来だよ」

「何ッ!?総司の奴姉さんに手紙を渡していたのか…!?」

よほどショックを受けたのかそのまま黙って二階の自室へ行ってしまった。

(あーあ…こりゃまた刀出してくるな…止めないと)

一君は武士や刀などが好きで、真剣も何本か所持しているほどの刀オタクなのだがキレた時に外に持ち出そうとするのだ。確かに剣道部で太刀筋も良く三年連続インターハイ出場している実力の持ち主なのだが…

「一君落ち着いて!!!!!」

「お許しください姉さん。俺の姉さんの警護に不備があったのです。邪魔なものは切り捨てなければなりません」

「警護!?!邪魔!?!!!待ってお姉ちゃん状況がわからない!!!」

「いいえ。姉さんはそのまま何も知らなくて良いのです。俺は行ってきます」

「だからあああああ待ってえええええ読んでみよ!ね、読んでみよ!?」

ぴたっと止まる一君の動き、お、これは聞いてくれるか…?

「えーこほん。『ナマエちゃん久しぶり。元気?僕はまあまあだよ。こうして手紙を書いてるのは一君についてなんだ。』」

「俺について…?」
「『一君昔から重度のシスコンじゃない?でさ、ナマエちゃん今朝一君にトイレットペーパーのおつかい頼んだでしょ。僕が「やっぱりトイレは別々なの?」って聞いたらもの凄い形相で「姉さんは排便などしない!!!!!!!!!!」って言われたんだけど。面白かったから告げ口しとくね?トイレが別々か尋ねただけなのにどうしてうんこの話に』「総司いいいい!!!!!!姉さんにう、うん……などという汚い言葉を口に出させるなど……!!!!!!」

「一君言えてないよ」

「姉さん!!俺は少し出掛けてきます」

「…あー、…いってらっしゃい」

止めるのも面倒になった私は刀を構えて走っていく一君の背中を見送った。



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