「総司さん…」
「やだ…行かないで」
上半身だけを起こしてぎゅうと縋られる。
病人の総司さんを邪険にすることもできず私はただ焦るばかりだ。
「あの、洗濯物を干すだけですから…」
「やだよ。僕の目の届く場所にいて」
そんなの今日一日何もできないのでは…というのは飲み込んで頭を撫でた。
「総司さん。」
私のお腹に顔を埋める総司さんは可愛い―、けど今は可愛さに負けてはいけない!
「あの、お粥作ってきます。だから寝ていてください、起こしますから…」
「やだよ。」
漸く顔を上げた総司さんの顔はむくれていた。
「手を離して君がどこかに行ってしまったらどうするの、」
ああ、まだこの人はそんなことを言っているのか。
「私はどこにも行きません」
「…本当に?」
「はい、約束です」
少し不安な表情をしたまま、手の上に置かれていた私の手を取ると掌に口づけした。
「君を信じるよ。僕の前から消えないで…。…夢を見たんだ。まだみんながいた頃の夢。起きたら誰もいなくて――」
我ながら子供みたいだね、と嘲笑する総司さんをまた抱き締めた。
「私はずっと総司さんと一緒にいます。ずっとずっと。命果てる時まで」
怖いんだ、君が消えるのが