◎ 02
「音也。近い」
「えーっ!そんな事言わずにさー」
「うるさいよ!もー、ほんとなんでこんなに懐かれてるの」
なまえがハァッと溜め息をついた。今は学校の図書館に居て、なまえが課題をやってる横で覗きこませてもらってる。大体ね、あんたは――何か言ってるけど俺はいーじゃんいーじゃん!で片付けてしまい邪魔をし続けたお蔭か、「もーー!音也が邪魔するから終わらないっ!今日はもう終わり!」と課題を片付けてくれた。
「私トキヤに用事あるから。部屋行くね」
「トキヤに?」
「うん。ちょっとね」
少し照れたように言うなまえに、胃がムカッとくる。
「俺には言えないような用事なの?」
「はぁ?何言ってんの。私達そんなのいちいち言いあう仲じゃないでしょ。前から思ってたけど音也は私を束縛しすぎじゃない?」
心底嫌そうに言った後じゃあねと手をひらひらさせて行ってしまった。
束縛しすぎ?―ううん。愛してるから。なまえを愛してるから何もかも全てが知りたいんだ。
いちいち言いあう仲じゃない?―ううん。俺達は恋人同士。お互いの気持ちや行動やカラダの隅々まで知っておく必要がある。
…カラダ?
ああ、カラダをまだ知らない。
だからなまえはまだ素直になってくれないのかな。
きっと隅々まで知ればなまえも素直になって音也くん大好き!とか言っちゃうかも。
そうだよ!なまえとセックスしよう。
愛のために。
翌日、俺はまず昨日の事で謝りたいから、となまえを呼び出した。学校は休みだし、トキヤはバイトで朝からいない。毎日バイト行っててすごいなあ。
暫くすると返信が来た。あ、なまえだ。
『了解。私も実はちょっと気にしてた。今から行くね』
うん、いいよ…そう返信すると俺はベッドに倒れ込んだ。今からここでなまえとヤっちゃうんだ。俺初めてだけど予習はしたから大丈夫。なまえもきっと俺が初めてだよね。どんな反応を見せるんだろう。あ、やばい勃っちゃいそう。落ち着け俺。童貞みたいじゃん!いや、童貞なんだけど。
ピンポーン。
来た!はーい!と返事をして急いでドアを開ける。
「音也、ごめんなさい!」
突然ガバッと頭を下げられ動揺する。
「なまえ…俺こそごめん。中入って?お茶入れるからさ。」
「うん…おじゃましまーす」
ストッキング履いてるのかな、すごく綺麗な脚だ。靴を脱ぐ動作さえ綺麗で脳裏に焼き付いている。
「ソファ座って!緑茶だけど飲める?」
はい、と手渡すと小さくお礼を言われた。
「俺…ごめん。束縛とか、そういうつもり全然なかったんだ。それでなまえを傷つけてたなら…本っ当にごめん!」
「音也!私こそ言い方がきつすぎた。普段仲良くしてくれてるのにあの言い方はないよね…、ごめんなさい!
少しの静寂が訪れ、そろっと顔を上げる。
目がバッチリ合う。えへへ、と笑いあった。
今だ、よね。
肩をぐっと掴むとキスをした。頭を抱えるようにして口づける。
「!?おと…っゃ、め…」
胸を押してくるなまえを無視して舌をねじこんだ。後頭部を強く押さえ逃げないようにする。なまえの口内を隅々まで舐める。あったかい。なんか甘い気もする。やばい勃ってきた。痛い。
「なまえ…」
漸く唇を離しソファーに押し倒す。恥ずかしいのか抵抗してくる手が邪魔なので縛った。うん。これで大丈夫!
「なまえ、愛してる…」
俺は、初めてなまえを抱いた。
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