◎ 03
「……」
「なまえ…」
「…おとやさいてい」
「なんで?嫌だった?恥ずかしかった?」
なまえの怒る理由がよくわからなかった。
確かに突然だったかもしれないけど俺達の間に愛はあったはずだ。
「ごめん。私音也との距離が近すぎたのかな」
どういう意味なんだろうか。距離など必要あるのだろうか?
「とにかく、これはトキヤに伝えさせてもらうから」
「待ってよ!」
ここで俺は慌てた。どうしてトキヤなんだろうか?俺達の関係には全く関わりがないではないか。
てきぱきと服を身につけていくなまえのブラウスを奪う。人質ならぬ物質だ。
「…なんなの?」
「どうしてトキヤの名前が出てくるの」
「はあ?なんで私の彼氏に伝えちゃいけない訳?」
彼氏。
今彼氏って?
「ごめん、なんて言った?」
「だから、彼氏だって。私の彼氏にどうしてレイプされた事を伝えちゃいけないのって。私だけじゃどうすればいいかわからないからトキヤの指示仰ぐ事にする。じゃあね」
呆然とする俺の手からブラウスを奪い取り部屋を出ていくなまえの背中を見つめ続けた。
彼氏は俺じゃなかった?
じゃあいままでのときはなんだった?
トキヤはどうして何も言わなかった?
そうだ、トキヤは真面目だから誰に聞かれるかわからない校内で欲にまみれた独占欲なんか露にするわけが無いんだ。
さっきまで俺はどうしてなまえと付き合っていると思っていた?
いつから?何をきっかけに?
……全てなまえの思わせぶりのせいだ。
ああやってみんなに公平に接するから悪いんだ。
きっとこれからも俺みたいな奴が現れる。
何よりこの世で一番なまえを好きなのは俺だ。
俺しかいないんだ。
なまえはトキヤに何て伝えるのかな?
トキヤはどんな気分なんだろう。
ああ、
(夜が怖い)
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