上空からの殺気にクラウドは身構える。
かなりの高さから降下してきたにも関わらず、ふわりと体重を感じさせずに降り立つ姿は優雅ですらあった。
事実、体重などは存在しないのかもしれない。
その正体は英雄の姿を模したジェノバなのだから。


「…セフィロス」


ぎり、と睨み付けると、意に介さぬようにふんと鼻で笑われる。
クラウドは込み上げる感情を押さえ込み、静かな声で問う。


「…何をしにきた」

「愚問だな。お前を導くため」


うんざりだ。
こちらに向けて差し伸べられた腕、その手首でブレスレットがちゃり、と鳴る。
クラウドの記憶にはないその装飾品ですら、忌々しく感じられた。

記憶にはない。
クラウドははたと我に返る。
ジェノバはクラウドの記憶に合わせて姿を変えているのではなかっただろうか。
ならば、クラウドの知らない姿をしているのは辻褄が合わない。
もしや、ここにはクラウドの他にもセフィロスを知る者がいて、その記憶すら取り込んでいるのでは。

そうなると、分が悪い。
全く知らない戦い方をされるのでは勝敗の予測がつかなくなる。
それほどまでに英雄セフィロスは強かった。
無論、だからと言って負けるつもりは微塵もないが。


「随分と綺麗なお飾りだな」


出来る限りの皮肉を込めてそう言うと、セフィロスは少し腕を上げてそれを見やる。
そして興味の無さそうに手首を少し揺らした。


「趣味ではないがな。ただの天野仕様だ」

「…それなら、肩当てに填めてるのは…」

「天野玉だ」


クラウドはほんの少し安堵した。
この世界に来てから肩当てにちらちらと輝くそれがマテリアかと思っていたからだ。
英雄と呼ばれた程の彼が、連結穴もないのに支援マテリアを填めている姿は見るに耐えなかった。
正直なところ、マテリアの使い方も知らないのか単細胞が!セフィロスを辱めるなジェノバ死ね!と思っていた。
天野玉なら仕方がない。

何せ、ジェノバはマテリアを投げるものだと思っている節がある。
セフィロスの豪速球で打ちつけられたときは痛くて死ぬかと思ったが、マテリアの使い方としては完全に落第点だ。
サンダガだのクエイガだの、当時一般兵だったクラウドが見たことのないほど、高度な魔法をさらりと使いこなしていたセフィロスを見習うべきである。
そういえば、最初で最後となった同行任務で、戦闘不能になったクラウドにあろうことかアレイズまでかけてくれたのだった。

それ以上思い出すとクラウドのPTSDの原因にまで繋がるので、無理矢理に思考を切断する。

セフィロスは相も変わらず不敵な笑みを浮かべている。
その表情はクラウドの憎しみを呼び起こし、握った手がぎりりと鳴った。


「そんなにこれが気になるか?」


クラウドの心情とは裏腹にそんな的外れなことを言って、ブレスレットを翳す。
セフィロスは手首を傾けてそれを外すと、クラウドに向かって放り投げた。
反射的に手に取る。
少し高めの位置に投げられたので、反射的に背伸びした。

セフィロスはクックッ、と喉で笑う。


「…何のつもりだ」

「それを、お前への新たな贈り物にしよう。見る度に私を思い出すといい。私に導かれたことを」

「ふざけるな!」


瞬間的にかっとなる。
クラウドは手の中のものを投げ返そうとした。
ぴく、とセフィロスの眉が寄せられる。
ぴた、とクラウドの動きも止まった。
その様子を暫く眺めてから、セフィロスは少し寂しげに笑った。


「要らないのなら棄てるといい。返されるとオレも、困る」


クラウドはずしゃ、と膝を付いた。
頭がガンガンする。
棄てられるわけ、ないだろう!

痛みの向こう、ぼんやりした世界でセフィロスが笑う。
全てはジェノバによるまやかしだ。
わかっている。
屈するわけにはいかない。


「クラウド…お前は本当に、可愛いな」


わかっている、でも。
ああ、セフィロスさんまじかっこいい。







天野玉→天野絵に見られる、よくわからない装飾っぽい玉。セシルの髪の毛にいっぱいついてる。

ディシディアポーションでセフィロスの肩当て見てびびった。
支援マテリアを単独でって、ぜんたいかマスターで荒稼ぎ以外何も思い付かない。





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