靴を通してでも、でこぼこしているとわかる道を歩きながら、オニオンナイトは危うく躓きそうになった。
でもそんな素振りは決して見せない。
傍にティナがいるのだから。
「足元、気を付けてね」
振り返ってそう言うと、ティナはうん、と頷いた。
その矢先にティナがふらついてしまったので、オニオンナイトは慌てて駆け寄った。
「大丈夫!?」
「う、うん。平気」
本当に危ないね、ここ。
そう言って照れくさそうに笑うティナにオニオンナイトは手を差し出す。
「仕方ないなあ、ティナは」
「…ありがとう」
握った手が優しく包み込まれて、オニオンナイトは心がほっと温まるのを感じた。
おい、と後ろから呼び止められるまでは。
「クラウド?」
いち早くティナが振り返る。
その先には、いくつかの装備品を抱えたクラウドが歩んで来ていた。
転べ、転べ。
念じてみるものの、祈りは天に届きにくいものらしい。
クラウドは難なくこちらまで来てしまい、オニオンナイトはちぇっ、と小さく舌打ちした。
別にクラウドのことが嫌いなわけではない。
いや、やっぱり嫌いだ。
いつも何気ないことのようにティナに近寄って、二人の世界を作ったりするから。
クラウドと話をするとき、ティナが少し上を向くのも気に入らなかった。
オニオンナイトは、いつも見下ろされるしかない自分の身長を恨んだ。
「どうしたの?」
「さっき、新しく手に入れた装備品の分配をした。ほら」
差し出された新しい武器を受け取り、オニオンナイトは渋々ありがとう、と礼を言う。
機嫌が悪いのをクラウドは不思議がっているようだったが、特に言及はせずに手の中のものを整理した。
そしてティナに向き直る。
「おまえには、」
言いかけて、あ、とクラウドが口を噤む。
ちらりとオニオンナイトのことを見て、小さく咳払いをした。
「…あんたには、これとこれだ」
ティナがふふ、と笑いながら受け取る。
ああもう、ティナ!そんなやつに笑顔見せなくていいよ!
「おまえ、でいいよ」
「いや…」
少し戸惑うように顔を逸らしたクラウドに、オニオンナイトは腹が立つ。
始めこそ、ティナにそんな態度、と怒っていたのだが、クラウドのそれが照れているのだと気付いてからは余計に気に入らなくなった。
ティナがそれを見て、また柔らかく笑うのがもどかしかった。
「じゃあ、私は何て呼べばいいかな。あなた?」
「あな…っ」
クラウドが絶句したと同時にオニオンナイトにも限界がきて、ついに声を張り上げた。
「もうっ!いい加減にしてよね!」
親しくなると二人称が少し雑になるよねっていう話。
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