ジタンは、クジャをこの場所に寝かせておくことにした。
抱き上げていって、外に埋めてやろうとも考えたが、いつか帰るところだと言ったここをクジャの寝床にしてやりたかった。

クジャの頭上の辺りを少し掘り、刃の欠けた盗賊刀をそこに突き立てた。
あの日以来ずっと壁に立てかけたままで錆びていたが、最後までジタンを守り通した刀だ。
お守りには最強のはずだ。
ジタンはその柄を撫でた。


「こいつのこと頼むぜ、相棒」


そして、クジャを見下ろして少し笑う。


「ちょっと厄介だけどな」






地上に飛び降りると、外はいい天気だった。
根の周りに大きくそびえる崖をよじ登りながら、花を手向けよう、とジタンは思う。
世界を憎んだ、世界に愛されない彼のために、どんなに離れてもここに戻り彼のために花を捧げよう。
彼のために祈ろう。


何度か滑り落ちながらも崖を登りきる。
最後に体を何とか自力で引き上げると、ジタンは視界に広がる大地に目を見開いた。

季節は巡った。
ジタンの髪も肩に届くほど伸びていた。
霧の消えた大地には、一面に花が咲いていた。

ジタンは後ろを振り返る。
どうやら、花はいらないみたいだ。
天高く仰ぐ大樹。
これがクジャの墓標だった。


ジタンは前に向き直り、大きく伸びをした。


「さて、そんじゃお姫さまをさらいに行くとすっか!」


ジタンは駆け出す。
空はどこまでも青かった。










【おやすみのまえに】


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