朝起きて顔を洗いに行くと、先客がいた。
おはよう、と声をかけると顔を水で濡らしたままジタンが振り向く。
そして、ぎょっとした顔になった。

人の顔を見るなり失礼だな。
挨拶くらい返したらどうだ。

思うだけで口にはせず、ただ、どうしたとだけ尋ねる。


「スコール、顔、やばい」

「…何だと?」


余りの物言いに今度は声が出る。
自慢じゃないが、見目は悪くはないはずだ。


「ああ、違うそうじゃなくて、いいからこっち!」


ジタンに腕を引っ張られ、水を張った洗い場に顔を向けさせられる。
水鏡の中には自分の顔があった。
ただし、常と違う点はその頬には大きな痣ができていることだった。

スコールは俯いて大きな溜め息を吐いた。
原因には心当たりがある。というか一つしかない。
昨日、技を出した後に着地しそこねて段差に頬を強打したのだ。
側で見ていたバッツとジタンに腹を抱えて大笑いされたのには腹が立ったが、幸い血は出なかったし、痛みもさして後に引かなかったから問題はないと思っていた。
甘かったようだ。
あのとき笑われたことには、心の中で覚えてろよとだけ刻む。

ジタンの方に向き直り、どのくらい酷い、と問う。
水鏡でははっきりした色合いまではわからない。


「うーん…赤いっていうか青いっていうか…」

「紫?」

「いや、黒い。ついでにちょっと腫れてる」


言われて、頬に触れてみる。
確かに少し腫れていて、一晩経った今でもはっきりした熱を持っていた。


「さっさと回復しちまえよ。持ってるんだろ、ケアルガ」

「…いや…」


罰の悪そうに口ごもるスコールに、ジタンが怪訝な顔をする。


「まさか使い切っちゃった、とか?」

「逆だ。100あるから、使いたくない…」


すぱん、といい音がした。
ジタンに頭を叩かれたのだが、一瞬何が起きたのかわからずにスコールは目を白黒させる。


「アホか!何のためのケアルガだよ!」

「…お、お前にわかるか!一つ使ったら急激に弱くなるんだぞ、そんなの、俺は嫌だからな!」

「んなこと言ってる場合じゃ…」

「どうした」


横から入った声に、口論を止めて振り向く。
見れば、ウォーリア・オブ・ライトがすぐ近くまで来ていた。


「仲間同士で言い争いとは感心しな…どうしたスコール。酷い顔だぞ」


その言い方はやめてくれ、とスコールは心の中で呟く。
回復しなくて大丈夫なのか。
そう問われて、スコールが更に言葉に詰まっているとジタンが助け船を出した。


「あー、今ちょっと使えないんだって、魔法」

「それは弱ったな。私も魔法の心得はない」

「俺もからっきしさ」


悩んでくれている二人に、スコールはどこか申し訳気持ちになる。
だが動けないほどの傷ならいざしらず、この程度で自分の戦力が落ちるのは我慢ならなかった。
そうは思うものの、やはり何だか忍びなくて足元を見つめていると、不意に頬に触れられる。


「!?」

「警戒しなくていい。おまじないをしておこう。回復魔法ができる者が起きてくるまでの気休めにはなる」

「おまじない?スコールにいっぺん戦闘不能になれってこと?」

「何を不穏なことを言っている」


二人が妙に気にかかる会話をしていたが、こうして触れられることに慣れていないスコールは身動きが取れなくなっていた。
何をされるのか不安ではあったが、頬を包む暖かさが退避を許さない。

行くぞ、と声をかけられ、スコールは身構えた。


「痛いの痛いの、とんでいけ」


ぽかん、とスコールの口が開く。
ウォーリア・オブ・ライトを挟んで向こうに、同じく口を開けているジタンが見えた。
少しして、漸くジタンが首を傾げた。


「おまじないって…そっち?」

「馬鹿にしたものでもない。痛みは気の持ちようで変わるからな、どうだスコール」


どうだ、と言われてもどうしようもない。
確かに痛みは感じていなかったが、それは動揺で神経が麻痺しているだけだろう。
だが、スコールはそうは言えなかった。


「…痛く、なくなった」

「それは良かった」


漸く頬から引かれた手に少し安堵する。
そして、笑いを噛み殺しているジタンを睨み付けた。

ふあ、と後ろに間の抜けた欠伸声が近付くのが聞こえ、スコールは振り返る。


「おはよ〜」

「おはよう、バッツ」

「ああ、って何だスコール、その酷い顔!」


一瞬前まで寝ぼけ眼だった瞳をぱっちり開けて、驚愕の声を上げるバッツに、スコールは顔をしかめた。


「その言い方、やめてくれ」








翌日以降に色が出てくる酷い痣作ってるディシディアメンズが見たい欲求。




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