「そこの」


不意に背後から聞こえた声に、クジャは振り返る。
“そこの”扱いされたことは気に食わなかったが、ここで無視して後々まで纏わりつかれてもかなわない。


「僕に何か用かい?」


宙に身を任せながら腕を組むと、声の主は同じように宙を舞いながら近寄ってきた。


「用と言えばそうだが…」

「何もないなら、もう行くよ。君に構ってる時間はないんだ」

「そう急くな」


つい、とその背中の触手が伸びてクジャの道を阻む。
瞬間的に血が頭に昇る。
クジャは振り払うように腕を広げた。


「だから用があるなら早く言えと言ってるだろう!焦らされるのは嫌いだよ!」

「お主の体に興味がある」

「………はあ!?」


クジャは露骨に顔を歪めた。
予想だにしなかった返答ではあるが、それはクジャの興味を引くどころか不快ですらあった。


「体が夜泣きでもしてるのかい?他を当たりなよ。それじゃ」

「急くなと言うに」


体を翻したクジャの背に衝撃が走る。
続いて体が吹き飛ばされ、地に押さえつけられた。
受け身を取れなかったがために呼吸が止まる。
咳き込んで背を丸めると、両の腕に痛みが走りクジャは小さく呻いた。

見れば、暗闇の雲の背に控える二本の触手がクジャの腕に噛みつき、その牙を食い込ませていた。


「…何のつもりだ!」

「わかっておるだろうに」


暗闇の雲の指がクジャの頬をゆっくりと撫で上げる。
クジャは顔を背け、ギッと睨みつけた。


「やめてよ。こういうのは僕の趣味じゃないんだ」

「お主の趣味など、わしの知ったことか」


喉で笑いながら、暗闇の雲がクジャの上にのしかかる。
常に宙に身を浮かせているため重みはさしたるものではなかったが、その豊満な乳房がクジャの胸の上でたゆんだ。
やめてよ、と身をよじると、触手がギリリとクジャの肉を抉る。


「い…っ!肌に傷が残ったらどうしてくれる!」

「それが嫌ならば大人しくしているがよいわ」


暗闇の雲が笑い、クジャの腰に手を伸ばす。
ゆるゆると撫で回され、クジャは目を瞑った。


「っく…!」

「…ふむ。やはり女のような腰回りよ。お主、よもや女性体ではあるまいな?」

「用ってそれなのかい…口頭で聞けばいいじゃないか」

「お主が聞いて答えるようなタマか?」


クジャはぐっ、と黙る。
確かに言うとおりだ。くだらないと吐き捨てて会話を打ち切っていただろう。
そうしているうちに、暗闇の雲の指がクジャの下半身に伸びる。


「っやめ、」

「…ほう」


クジャの、服と呼ぶには足りなさすぎる覆いが外され、頭をもたげかけたそれが外気に触れる。
その下をつうっと指が滑り、クジャの喉が反る。


「やはり女性器はないか」

「もういいだろ…早く離してよ」

「まだ、これからよ」


そう言って、指がクジャの後ろへと埋め込まれる。
突然の痛みと驚きで、クジャは小さく悲鳴をあげた。


「な、何をしてるんだ!」

「聞くまでもあるまい?」


ゆっくりと内部をかき回され、クジャの背がびくびくと揺れた。


「慣れているようだな。簡単に飲み込んでおるわ」

「や、や…っ」

「指一本では足りないか。こんなにひくつかせて、いやらしい体よ…」


指が増やされ、入り口を開かせるように広げられる。
何とか逃れようと身を引いたが、腕に食い込む牙の痛みにクジャは半ば泣き声のような悲鳴をあげた。


「こんな…ことをして、君に何の得があるって言うんだよ…!」

「得か…強いて言うのなら」


指がずるりと抜かれ、クジャの腰が震える。
暗闇の雲が肌を隠す薄手の布を脱ぎ去り、見せ付けるように腰を浮かせた。
クジャが目を見張る。


「なん、で…それ…」

「驚いたか?これで意味がないとは言えまい」


暗闇の雲の下半身にはそそり立つ男性器が存在していた。
それをゆっくり扱き上げると、クジャの弛んだそこへと押し付けられる。


「…や、いやだ…やめてよ、ねえ」

「焦らされるのは嫌なのであろう?」


一気に貫かれ、クジャが叫び声を上げる。
強く閉じられた瞼から、涙が筋になって零れ落ちた。


「惑い、闇に怯える可愛い幼子よ。身を任せ楽になるがよい」


涙の落ちたこめかみに、暗闇の雲が口付ける。
クジャの鼻腔を、女性特有の柔らかな甘い匂いがくすぐった。








くもさまふたなりかわいい




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