友人と呼べる、と思う。

ガンブレードを磨き上げながら、スコールは一人思考に耽る。
この世界で出会った仲間は、戦力という面でも精神面でも強く、背中を任せるに足る者ばかりだった。
スコールが元居た世界で道を共にしてきたような、あの仲間たちと近しいものを感じる。

でも、あいつらは、違う。

バッツとジタン。
彼らは、スコールが未だ接したことのない人物だった。
スコールが人に対して張る「壁」は、彼を守ってくれたが、彼を一人にもさせた。
安定感をもたらしてくれたけど、孤独感は拭えなかった。
その壁を彼らはいとも容易く乗り越えてくるのだ。
どんなに高く壁を積み上げたって、ぶち壊してスコールを引っ張り出す。
いつしか壁を築くことも忘れてしまった。自然と笑みが出るようになった自分に気付いた。
嫌じゃなかった、が。


「あ、いたいた!」

「おーい、スコール!」


噂をすれば、である。
向こうから走ってくる彼らを視認して、スコールは身構えた。


「スコー、ルっ!」

「うわっ」


ジタンが走ってきた勢いそのままに、スコールに飛び付く。
少し遅れてバッツが腕を伸ばし、スコールの首に引っ掛けた。

これだ。これがどうしても、馴染めない。
彼らの愛情表現とやらは少し激しすぎた。
幼少期においてスキンシップが少なかったスコールには落ち着かないものでしかない。
不快、というよりはむず痒くてどうしようもないのだ。


「や、やめ」

「何だ、またガンブレードの手入れ?好きだねえ」


好きとか嫌いとかじゃない、必要だからするだけだ。
頭の中で思っても、口に出すまでに時間がかかる。
その間に、頭をわしゃわしゃとかき回されまたスコールは言葉に詰まる。

むず痒さはスコールの頬を熱くして、感情のメーターがどんどん上がっていく。
振り切れてしまったら、もう何も言えなくなってしまう。
彼らのスキンシップは容赦なくスコールを追い詰めていった。


「こら、スコール困ってるんじゃないのか?」


突然降ってきた声に、スキンシップの手が止まる。
バッツとジタンは、声の主を見上げていた。
スコールも同じように見上げる。


「フリオニール…」

「遊んでるならいいけどな、スコールパニックになってるじゃないか」


来いよ、とでも言うように差し伸べられた手を、スコールは思わず掴む。
強く引き寄せられて、立ち上がる。
足がおぼつかないのではと危惧したが、きちんと立つことができた。


「フリオニール〜」

「俺らのスコール取んなよー」

「スコールは物じゃないだろう」


そうして、飛びつかれたときに付いたらしい服の汚れだとかを払ってくれる。
お礼くらい言いたかったが、気恥ずかしくて顔を上げることも出来なかった。


「スコールも。嫌じゃないだろうけど、困ったらちゃんと自分で言わなきゃな」


ぽんぽん、とスコールの頭を軽く撫でた手はごつごつしていて、大きかった。
スコールの戸惑いが伝わったのか、くすくすとフリオニールが笑う。


「…可笑しいか」

「いや、スコールは可愛いなと思って」


より一層、頬が熱くなる。
赤くなってしまってるんじゃないかと思う。

一つしか違わない筈なのに、落ち着いていて。
夢を、信念を持っていて、真っ直ぐで。
こんな風になりたい、とスコールは思った。


「フリオニール、ずりいって!」


落ち着きのない友人たちに後ろからタックル紛いの抱き付きを喰らって、スコールは柄にもなく「わあ!」と大声を出してしまった。






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