「カイン、今晩空いてる?」
にこやかに声をかけてきたセシルの、その真意を測り損ねカインは言葉を詰まらせる。
「やだな、警戒しないでよ。ローザが呼んでるんだ」
「なら先にそう言え」
あからさまなカインの態度にセシルは苦笑しながら、じゃあ今夜部屋に来てくれよ、と告げ去っていった。
ノックをすると、どうぞ、と軽快な声が帰ってくる。
食事は済ませてきたけれど、良かっただろうか。
指定されたのは、食卓に呼ばれるのには少し遅すぎる時間だったのだが。
部屋に入ると、真っ先に目に入ったのは下着姿のセシルだった。
「なっ…?!」
「カイン、よく来てくれたね」
「挨拶はいい、何だその格好は!いくら相手が俺とて、少し気を緩めすぎだろう!」
「なあに、大声出したりして」
「あぁローザ、お前からも…」
奥から現れたローザを見やり、カインはぎょっとした。
ローザが身に付けていたのは、黒革のボンデージに、同素材のニーハイブーツ。その踵は、勿論と言わんばかりにピンヒールだった。
もう一度セシルを振り返ろうとして、体が強張る。
いつの間にかセシルはカインのバックを取り、カインの両手を素早く後ろ手に縛り上げた。
よし、と満足げな溜め息を零すセシルに、カインは我を忘れて怒鳴りつけた。
「セシル!どういうつもりだっ!」
「すまないね、カイン。でもちょっとだけ助けて欲しいんだ」
「助け…?」
首を傾げると、ローザが頷いて後を継いだ。
「そうなの。私たち、うまくいかなくて…」
俯くローザに、カインの警戒心が解かれる。
ローザに甘すぎるところは、確かにカインの欠点だった。
「ぼくたち、実は二人ともSなんだ。だからどうしても満足のいくセックスができなくて」
「そう、だからカイン。あなたにM役をお願いしたくて、呼んだの」
「ふ、ふざけるなーっ!!」
激昂するカインを押さえつけ、セシルは手慣れた風に服を脱がしていく。
時折感じやすいところに触れるのも忘れない。
喚いていたカインも次第に口数少なくなり、全部脱がし終える頃にはくたりとセシルに背を預けていた。
「上手いものね」
「カインのことなら、割とね」
何が割とだ、とカインは朦朧とした頭で毒づく。
これから何をされるのか、想像だに恐ろしかった。
「ひ、ぁ!」
突然中心に触れられ、高い声が漏れる。
見やると、ローザが屈んで、そこに指を這わせていた。
「ろ、ローザ、やめてくれ!そんなところを…」
「あら、手では嫌だった?」
ローザはカインの後ろに視線をやる。
セシルと目配せしたのだろう、カインを押さえつけたまま床に座り込んだ。
カインはセシルの膝の上に座らされ、脚もセシルによって大きく開かされた状態だった。
羞恥に耐えかねて目を瞑ると、中心に圧がかかる。
「あぁっ!」
「あら、足でされる方がいいの?とんだ変態ね」
「ろ、ローザ、やめ…っ」
「お黙りなさいな。こんなに硬くしておいて…」
くすくすと耳元で笑われ、それにすらびくりと体が反応する。
「楽しそうだね、ローザ」
「セシルこそ、ぎらぎらした目をしちゃって。今にも舌なめずりしそうよ」
くすくすと、まるで二人きりの睦言のように言葉を交わすセシルとローザに、カインは頭がぐらぐら揺れるのを感じた。
「ふ、二人とも…どうか、してる…」
「あら、あなたもどうにかなってしまえばいいのよ」
言うなり、体重をかけてぐりっと踏みにじられる。
「あぐっ…!」
喉が潰れたような声が漏れる。
痛みに頭がガンガンと鳴り、ぼたぼたと大量の涙が零れ落ちた。
「やだ、カイン。今のでいっちゃったのね」
涙で滲む視界の中に、ローザの白い足が見える。
確かにそこには、放たれた液体がべっとりとこびり付いていた。
カインは、興奮に身が震えるのを感じた。
「あぁ、カイン、可愛すぎる。我慢出来ないよ。ローザ、もう慣らしてもいいかな」
「えぇそうね。お願いするわ、セシル」
言うなり、後ろにセシルの指が埋め込まれた。
先走りで濡れそぼったそこは骨ばった指を難なく飲み込み、かき回されるとひくついた。
「カイン、後ろ慣れてるね?もうぼくとはずっとしてない筈なのに」
「あら、セシルってばカインとしてたの?ずるいわ、あなたばっかり」
「すまないね、カインの初めてだけはどうしても貰っておきたくて」
普通に会話しているようで、セシルも興奮していた。
カインの尾てい骨の辺りに硬くそそり立つものが当たり、それが擦れる度にカインは身震いしていた。
「もういいかな」
セシルの膝から下ろされ、四つん這いにさせられる。
すかさず侵入する熱い楔に、カインは歓喜の声を上げた。
この感覚が忘れられなくて、カインは自らの指や剣の柄でそこを慰めていた。
カインに後ろの快感を教えたセシルのものに貫かれ、耐えられず涙を流す。
不意に、自分を見詰めるローザの視線に気付いて、羞恥に唇を噛む。
「あら、我慢しなくていいのに」
「く…っう、」
「そんなに声を出したくないなら…そうね、あなたが汚したものでも舐めていて」
目前に差し出された足に、カインは舌を這わす。
自分のものを口にするのは初めてだったが、セシルのものよりも幾分苦味が強い気がした。
指の間に舌を這わせると、ローザが少し身を震わせる。
カインは夢中でローザの足を舐め回した。
セシルが動く度に鼻から抜ける甘い声は、もう自分のものではないようだった。
「んっ、ふぅっ、ふ、ぁ」
「ねぇカイン、気持ちいい?」
「あっ、ぅ、ん」
「男でもバックで突かれるのって気持ちいいの?我慢しなくていいのよ」
途端、カインはローザから口を離し、喘いだ。
ローザは満足そうな微笑みをしていた。
「ああっ、あん!セシ…セシル!」
「カイン、いいよ…」
「あっ、あっ、いい!すごく、きもちい、あっ、いっいくっいっちゃうう!」
がくがくと体を震わせて性を吐き出すと、少し遅れてセシルがカインの中に熱いものを叩きつけた。
ずるりと中から抜かれる感触にすら体が震える。
昔のように耳元に口付けられ、カインは涙が止まらなかった。
「ローザ、いいよ」
セシルの声にカインが顔を上げると、ローザはそこにいた。
もう何も身に纏っていなかったが、ただ一つ。
股間に、大きなディルドのついたペニスバンドを装着していた。
「な、」
「カイン、今度は私が満足させてあげる」
ローザの手で仰向けにさせられ、脚を広げられる。
羞恥とは違う、どちらかと言うと焦りや恐怖に近いものにカインは戦慄した。
「ずっとこれ、使いたかったの。セシルは使わせてくれないし」
「ローザには一回使っただろう?」
「でも私、こんなものよりセシルのが欲しいのよ」
一度ローザの中に入り込んだというディルドがカインのそこに触れ、カインは自身が歓喜していることに気付いた。
「じゃあ、いくわよ」
ずるり、と無機質な硬さが入り込む。
先程くわえ込んでいたものよりも圧迫感が強かったが、十分に慣らされ、セシルのものを注ぎ込まれたそこはしっかりと受け入れていた。
「ローザ…ローザぁ…」
「あぁ可愛いわ、カイン。動くわよ」
奥を擦られると同時に、ローザの温かな乳房がカインの胸元を擦る。
硬くなった突起が何度も触れ、カインは意識が飛びそうだった。
「あぁ、セシル、きて」
急にかかる圧が大きくなり、ディルドが最奥にずりずりと入り込む。背が弓なりにしなる。
見ると、セシルがローザを後ろから貫いていた。
ローザに犯されながら、目の前には犯されて感じているローザ。
カインは倒錯感に溺れ、いつしかローザと重なるように喘ぎ声を上げていた。
「あっ、ああっ、セシル…!」
「ああ、あんっ、ローザ、ぁっ」
「…カイン、ぼくのことも見て…」
上からローザを挟んで、セシルに口付けられる。
カインは必死で吸い付いていた。
呼吸まで絡め取られ、今度はセシルに犯されているような感覚に陥る。
「気持ちいい?カイン」
「カイン、気持ちいいかい?」
「あっ、あぅん!はあっ…セシルっ…ローザ…気持ちいい、よ…!」
半分飛んだ意識の向こうで、セシルとローザが微笑んでいる。
セシルが髪を、ローザが頬を撫でてくれる。
「最高だったよ、カイン。すごく良かった」
「ねえカイン、私たちずっと一緒よ。いつまでも」
「あぁ。いつまでも、三人で」
どろどろに汚れた体で、カインは目の前が真っ暗になるのを感じた。
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