永い間、それは途方もないほどの年月だった。
力そのものである存在には命などない。
逆を言うならば、年月に因って風化することのない自身には終わりなどなかった。
閉じた世界が全てだった。
鋭く尖った爪は裂く対象もなく、憐れに鈍い光を返すのみだ。
爪の先で床を削り、夜を数えてみたこともあった。
それもいつしか無益と悟って止めた。
数えた日々の跡も風化していく。自身の存在を置いて。
どれほどの日々が過ぎていったのだろう。
孤独を耐え忍ぶのにも飽いた頃、対話者を見付けた。
己こそが唯一にして最高の話し相手だと気付いたときは安堵した。
しかしそれも一時のこと、出口のない思考の渦は自身を飲み込み沈んでいくだけだった。
初めてこの地に足を踏み入れた者たちは、強い意志を宿した目をしていた。
永遠の鎖に縛られた重い体を持ち上げるとみしみしと床が鳴った。
今このとき、世界が滅びに向かっているのはわかっていた。
そして目の前の者たちがそれを阻止する役目を背負っているのだということも。
この者たちがその大役に相応しいか否か。
それを確かめるのが自身に課された使命か。
存在意義というものを初めて実感して、身の奥が震える。
我を創造したものは、このときを待っていたのか。
滅びゆく世界を救う者たちよ。
神は世界を見捨ててはいない。
我を倒し、道を切り開くがいい。
時に置き去りにされ、創造者にも見離されたと思っていた体に力が溢れる。
錆び付いた喉を抉じ開けると、自身でも初めて聞く地鳴りのような声が響いた。
「我が名はアルテマ……」
BGMだけで存在感倍くらいにはなってるボスだよね。
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