んっと…これ公務なんだよね?
わかりました。それで、何を答えればよろしいんですの?

あ、普段通りでいいって?
いやー助かった。何て言うの、王妃サマの話し方、っての?窮屈で苦手なんだよね。
こんなこと言ったらまたばあやに怒られるんだろうけど、辺鄙な田舎の娘にいきなり貴族の振る舞いとか言われたってどだい無理なんだっての。
あのばあさん、やっと休めると思ったらこんなじゃじゃ馬を連れてくるとは、なんて言いやがって…。
見てろよ、リルムを一流のレディに仕立て上げるまで死ねないっていうなら、世界一の長寿ババアにしてやるんだから。

ん?あ、何でもないの。こっちの話。
それで、何?インタビュー?国民に向けてご高説垂れろって?

…ふーん…フィガロ王夫妻の馴れ初め突撃インタビュー…そんなの聞いて楽しい?
うーんとね、あいつとは、世界が崩壊したとき一緒にウヒョヒョ野郎を倒した仲間だったの。
知ってるって?だよねえ。

んー…最初に受けたプロポーズはね、断ったよ。
あー違う違う、そういうんじゃなくて。
あいつ、息をするのと同じ頻度で女を口説くでしょ。
本気にしてなかったんだよね、向こうもそうだっただろうし。
リルムそのときガキだったし。

あ、公務で流石に『リルム』はないか。今のノーカンで。

でね、会う度にお姫様みたいなもてなしとか胸焼けするような言葉とか…正直、ビミョーだったっていうか。
くどい!って怒鳴ったこともあったな。
手厳しいなって笑ってたけど、それも腹が立った。
子ども扱いされてるってのは別に何とも思わなかったよ。だって子どもだったし。

でもわたしの十四の誕生日…十四歳ってフィガロの成人の歳なんだってね。そのときはそんなこと知らなかったけど。
あいつサマサまで来てさ。
ご丁寧に、桐の小箱に入ったプレゼント持って。
いらないって突っ返したら、中身だけ見てくれって。
めんどくさいなーって思いながら開けたら、指輪が入ってたの。
シンプルだけどしっかりした作りで、あいつの瞳と同じ色の石が嵌ってた。
あいつが送ってきたものの中で初めて、ちょっと欲しいなって思った。
…あー、うん、そうこの指輪。
写真?やだよ、ケッコンシキで嫌ってほど撮っただろ。

えっと…どこまで話したっけ?
ああそうだ、指輪。これ、お母さんの形見なんだって。
あいつのお父さんがお母さんに求婚するときに送ったものだって。
それをわたしに受け取って欲しいって言ってきたの。

すっごい腹が立った。
お母さんの形見の指輪だよ。
そんな大事なものをくだらない冗談に使うなんて許せないもん。
だから意地悪してやろうと思って、訊いたの。
リルムのためなら何でも出来る?国を捨てて、二人で静かに暮らせる?って。
出来るわけないよね。国を背負ってるんだもん。
頷いた瞬間ひっぱたいてやろうと思ってたら、あいつ何て言ったと思う?
君のためなら私は命すら投げ出そう、しかし国民を見捨てることは出来ない。
共に背負ってくれとは言わない。ただ、フィガロが栄えていくのを、隣で見ていて欲しい。君に。

…だってさ。
普通さ、プロポーズで言う?あなたより大切なものがあります、でも結婚してくれだなんて。
わたしもびっくりした。
…けど、だから何ていうか、本気なんだなあって思った。
そしたら何か、ケッコンしてやってもいいかなあって思って。
ならいいよって言ったら、私は本気なんだよ、って不満そうな顔するから、リルムも本気だって言って、大事につけてたわたしのお母さんの指輪を外して、あいつがくれた指輪をつけて。
何か不公平かなって思ったから、お母さんの形見の指輪をあいつに渡したの。

そしたら途端にさ、あいつしゃがみ込んじゃって。夢じゃないよな、って公務では絶対に見せないようなふにゃふにゃの顔で笑ってさ。
あんだけかっこつけのくせしてね、笑っちゃうよね。
それ見てたら、このひとの隣で見る世界はきっとそんなに悪くない、って……。

……。あー、もう!やっぱこの話ヤメ!恥ずかしいったらありゃしない!
何か他に訊きたいことはない?ここまで話したら何を話しても同じだから全部答えるよ。

え?世継ぎの予定?
……何てこと訊くんだ、このウスラハゲ!!








インタビュー時のテレコ音声みたいな。
ハイティーンくらいのリルム。




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