一番初めに思い出すのは、彼女の笑顔だ。
俺たちのお姫さま。
ふざけて姫と呼ぶと顔を赤くして怒っていたけれど、そんな仕草も愛らしかった。

ずっと一緒に居たはずなのに、いつからか華奢な腕に触れることが出来なくなっていた。
壊してしまいそうで。

君があいつを目で追っていることに、多分俺は君よりも先に気付いていたよ。
俺は本当に、自分でも呆れるくらい君のことばかり見ていたから。
奪ってやろうと一度も考えなかったと言えば嘘になる。
でも、壊してやろうと思っていたと言うなら、それも嘘になるんだ。
あいつを選ぶなんて男を見る目があると思うからな。
君は俺の気持ちなど知らなかっただろうし、それでいい。
あいつは…どうかな、気付いてなかったと思うけど。あいつ、鈍いから。


次に見えるのは忌まわしいヴィジョン、そして君の青ざめた顔。
施された烙印と与えられた力。
どうして俺たちだったんだろう。どうして三人一遍だったんだろう。
息も失くした俺たちにあいつが言った言葉、君も覚えているだろう。

三人でよかった。僕たちならきっと乗り越えられる。

ああいうところ、絶対敵わないなって思うんだ。


記憶が巡る。
姫が倒れた。
一言断って服の裾を持ち上げると、烙印は白い肌を覆い隠して広がっている。
もう時間がないと悟った。

俺は独りで使命を果たす旅を続けることを決めた。
あいつは当然、自分も行くと言って聞かなかったけど。
殴ったのなんて何年ぶりだっただろうな。

姫をこれ以上消耗させられない、彼女を頼む。
俺は敵を倒して姫を護る。役割が違うだけだ、いつもそうだっただろう。
そんなことを言ったと思う。
あいつは唇を噛んで、わかったと頷いた。

だけど、彼女が持ち直したらすぐに後を追う。
ぼさっとしてたら僕が先に倒すからな。

俺は頷き返して、走り出した。

二人をシ骸になんてさせるものか。
使命は俺が果たす。
クリスタルになるのは、俺だけでいい。

遠く後ろから、馬鹿野郎、と聞こえたのは気のせいだったのかな。


既に意識は朦朧としていた。
俺にも時間がないのだろう。
姫はまだ無事だろうか、あいつは彼女をちゃんと護っているだろうか、そればかりを考えていた気がする。

足を引き摺ってスーリヤ湖に踏み入ったとき、烙印が痛いくらいに熱を持ったのがわかった。
間違いない、あのヴィジョンの魔物はここにいる。
一気に視界がクリアになって走り出した。
走り出したつもりだったんだ。
脚が動かなかった。
見下ろした俺の下半身は、でこぼこした岩のような硬い鱗に覆われていて、それがどんどん体を這い上がってきて




そして一番初めに思い出すのは、彼女の笑顔だ。
俺たちのお姫さま。
ふざけて姫と呼ぶと顔を赤くして怒っていたけれど、そんな仕草も愛らしかった。

ずっと一緒に居たはずなのに、いつからか……………






なあ、俺の望みは一つだけだったんだ。
君たちの幸せな姿をただ隣で見ていられたら良かった。
そう言ったら、笑うかい?








ミッション「崩れた三角関係」の人。
果たせなかった使命の妄想。




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