はな、と呟いたのが隣で聞こえた。

フリオニールが横を向くと、いつの間にか傍に来ていたらしい鮮やかな金髪が目に入る。
その碧い瞳はフリオニールを…というよりは、フリオニールの手元を見ていた。

視線を手元に落とす。
そこには色彩鮮やかなのばらがある。


「…花、だな」


他に何を言うことも出来ず、同意を示す言葉を漏らす。
するとクラウドはフリオニールの顔を見て、揺れる視線を誤魔化すように目を伏せた。


「クラウドは、草花が嫌いなのか」


自身の夢の象徴であるのばら、それを苦手と思われているなら正直心苦しい。
けれど、人の意思が自由であることをフリオニールは知っている。
自由であれと、思っている。

フリオニールの表情が薄く曇ったのに対し、クラウドは驚いた顔をした。


「違う。そうじゃない」


なら、一体どうしてそんな哀しげな目をするのか。
フリオニールが尋いてもいいものか逡巡していると、察したのかクラウドは自身から口を開いた。


「…思い出すひとがいるんだ。花を見ると」

「花を…見ると?」


クラウドは頷く。
そして何処か遠く、記憶の向こうを見るかのように瞳がさ迷う。


「出会ったときも、再会したときも。いつも花に囲まれていた気がする。いや、それより…」


何て言えばいいのか、と零したきりクラウドは言葉に詰まる。
俯いた唇がわななくのを、フリオニールはただ見つめていた。


「…花のようなひとだったんだ。散る、その姿までも…そっくりだ」


フリオニールは言葉なく、掌の上で力強く咲く一輪を見下ろす。
いつかは散ってしまう。
花も、人も。

道半ばで散っていった花々を、道を繋ぐために命を賭した仲間を忘れたわけではない。
忘れられるわけがない。


「…繋いでいけばいい」


ぐ、と拳を握る。
空にかき消えるのばらの幻影を見届けてから、クラウドを見据えた。


「クラウドが、志を継いで行くんだ。途切れさせないように」

「繋いで…行けるんだろうか。俺には、彼女みたいな特別な力はないのに」

「関係ないさ」


フリオニールは両肩に掛かる重みを確認する。
かつて仲間の手にあった数々の武器は、背中を押してくれている。


「仲間なんだろう?」


クラウドが小さく息を飲む。
頷いたその肩が震えていたのに、フリオニールは気付かない振りをして空を見上げた。








ディシディアフリオは熱血。

2は人死にが多いけど、娘だったり愛しい人だったりと繋いでいく誰かが遺されてるなーと。
ミンウの分は、形見のアルテマのほんを大事に取ってあります。(未使用)





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