「これで本当にいいのかな」
ぽつりとティーダが呟いたのを、バッツは聞き逃さなかった。
珍しく思い詰めた表情をしているのが気にかかったのかもしれない。
どうしたんだ、と問うとティーダは顔を一度上げ、すぐにまた視線を地に落とした。
「何かさ、クリスタル集めて、カオスの奴らぶっ倒して。これしか出来ないのはわかってるけど」
そう言って、ティーダは小さく息を吐いた。
「正しいのかな、これが本当に」
「珍しいな、ティーダがそういうこと言うの」
バッツが感じたことを素直に吐露すると、ティーダは唇を尖らせた。
「何だよ、俺が悩みとかないって思ってた?」
バッツまで。
小さく付け足された言葉に、バッツは軽く笑う。
そうじゃない。
ティーダは悩んでいても、決してそれを表に出すことはしないだろう。
どちらかと言うと、それを知られるのを避けようとする。
そんなティーダが、弱さとも言える部分を垣間見せたことが、知って欲しいと思っていることが嬉しかった。
バッツは口に出す代わりに、ティーダに手を伸ばす。
そして、柔らかそうな毛色の髪をふわふわと撫でた。
「…何スか、これ」
「ん?ティーダは可愛いなあと思って」
「馬鹿にしてる?」
頬を膨らせたティーダにバッツはかぶりを振ると、んー、と言葉を探す。
「悩むのはたぶん、おれたちの仕事じゃない」
「…わかってるよ、そんなの」
けれど、考えてしまうことは山程ある。
割り切ってしまえる程ティーダは大人ではない。
誰かにぶつけてしまえる程子どもでもない。
「…難しいッス」
「ああ。悩むなとは言わないさ。落ち込んだときに頑張れとも言わない」
「じゃあどうすればいいんだよ…」
そうだな、と言ってバッツはティーダの目を見つめる。
「笑っててくれ。そしたら、おれがお前の分まで頑張れるから」
ティーダは目を少し見開いてから、恥ずかしそうに視線を泳がせる。
「…バッツ、そういうとこ大人みたいでずるい」
大人だからなあ。
そう言ってバッツが笑うので、ティーダはますます頬を膨らせてしまった。
ティーダの笑顔はみんなの活力の元。
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