クリスタルを探す旅の合間、手に入る装備品や素材アイテムの量は相当なものだ。
それぞれ入手した物は各自で管理していたが、そうするとそれぞれが所有している袋に全てぶち込むことになる。
ごちゃ混ぜになった道具袋を抱えて、最初に耐えられなくなったのは意外にもクラウドだった。


「整理しよう」


そう言うクラウドに、皆が目をぱちくりとさせる。
そして、各々が持つ膨れた袋を見やった。


「整理って…」

「いい加減整頓したいんだ。必要なものがすぐ取り出せないと困るだろう」


そう言って、自分の袋を地に下ろす。
どさ、という重量感のある音と同時に中でがちゃりと金属の擦れ合う音がした。


「何も種類ごとに分けようと言ってるんじゃない。せめて、武器、防具、アクセサリー、素材くらいには分類しないか」

「だがクラウド、余り無為に時間を過ごすわけには…」

「いいよ」


渋る様子を見せるフリオニールを制したのはセシルだった。
クラウドも驚いたように目を見開く。


「いいのか?」

「ああ。どっちみち、そろそろ休憩は取らなければならないからね」


セシルもクラウドに倣って袋を下ろす。
すると、フリオニールも納得したように息を吐いた。


「助かる」


クラウドは言うと、袋を担ぎ上げて場を離れた。
ついでに今装備している武器の具合も調べるのだろう。
両手で扱う大剣を得意とするクラウドは、手入れの一つにも場所を取る。

離れていく背中を見ながら、珍しく終始無言を貫いていたティーダがぽつりと言う。


「クラウドって意外と神経質なんスねえ」

「ふっ」


フリオニールもセシルも、思わず笑ってしまう。


「そうだね。ぼくなんかは、よく使うものが上の方にあればあとはいいかなって感じだけど」

「それも意外だな。セシルはきちんと整理整頓するタイプかと思っていた」

「そう?」


セシルが袋の中を覗き始めると、フリオニールもそれに続いた。
残る一人、ティーダは何故か気まずそうに佇んだままだ。

それに気付いたフリオニールが顔を上げる。


「どうした?ほら、ティーダも」

「あー…俺もちょっと向こう行こうかな、なんて」

「どうして?」


首を傾げるセシルの瞳に耐えられなくなったのか、観念したようにティーダが肩を落とす。


「…道具以外にも自分のものとか入れちゃってるから、恥ずかしいんだ。多分ゴミとかも入れっぱなし」

「お前なあ…」

「だから、ちゃんと向こう行ってきれいにしてくるって!な?」


両手を顔の前で合わせて頭を下げるティーダに、フリオニールがはあっと大きく息を吐く。


「全く…まぁ、俺も投げ込んだきりで整理してないけど…」

「あ、フリオニールは意外でも何でもないッスね!」

「ティーダ!」


フリオニールの怒声から逃げるように飛び出したティーダを視線で追う。
すぐに小さくなる背中を見て苦笑を漏らす。
そのとき別の視線に気付いて横を見下ろすと、屈んだままのセシルと目が合った。


「…何だ?」

「いや…フリオニールも見られたくないものがあるなら向こうに行ってもいいよ」

「あのなっ!」


憤慨したものの、何も言えずにどっかと座り込む。
ほんの少し赤く染まった頬に、セシルはくすくすと笑った。

セシルも腰を下ろすと、道具袋の中から戦利品の数々を取り出す。
底の方にしまい込んでいたものを手に取ってみると、見覚えのない素材が幾つも出てきた。

なるほど、確かに整理した方が良かったみたいだ。
手の平の上で薄紫に輝く素材はいつ入手したのかも、その名すらも思い出せない。


「ねえ、これ…」


フリオニールを振り返り、セシルはそのまま絶句してしまう。
膝を付いて道具袋の中を覗き込んでいる後ろ姿を凝視する。


「フリオニール…」

「ん?」

「パンツ見えてるよ」

「パッ…!」


ばっと後ろを両手で押さえ、フリオニールが振り返る。
捲れ上がった裾に気付いて慌てて直しながら、咳払いを一つする。


「せ、セシル。これはパンツじゃないし、俺はスカートを穿いてるわけでもない」

「ああ、そうなのか。すまない」

「もう…びっくりしただろ」


スカートではないと言いながらもちらちらと裾を気にしている様子に、セシルの胸に悪戯心が湧き上がる。

道具袋に向き直ったフリオニールの後ろにそろそろと近寄ると、手を伸ばす。
そして、先程整えたばかりの裾を捲った。


「うわあっ!えっ!?な、セシ、セシル!?」

「あれ?パンツじゃないんだろう?」


それでも恥ずかしいんだ?
にっこりと笑ってみせると、フリオニールは真っ赤な顔で口をぱくぱくさせた。


「ほら、またパンツ丸見え」

「だっ!だからパンツじゃないって…」


恥ずかしそうに裾を押さえる手の隙間を狙ってまたも捲り上げると、ひいっと悲鳴を上げる。


「…何やってるんスか…」


呆れた声が後ろから聞こえて振り返ると、ティーダが声に違わず呆れ返った顔で立っていた。


「あ、ティーダ。早かったんだね」

「結構素材ばっかだったからすぐ終わったッス。で、セシルは何やってんスか」

「ティーダもやってみる?」


笑顔でまたもフリオニールの裾をひらりと捲ると、高い悲鳴が上がる。


「セシルっ!馬鹿なこと言うな!ティーダもぼさっとしてないで止め…」

「楽しそうだな!」

「は」


ティーダが持ち前の素早さでフリオニールの後ろに回ると、勢いよく裾を捲る。


「わああっ!?」

「ちょ!フリオニール焦りすぎ!」


腹を抱えて笑うティーダをフリオニールが睨み付ける。
と、次はその横に回ったセシルが裾を捲る。


「も、や…っめ…!」

「やっぱりパンツなんじゃないのかい?」

「違うッ!」

「のばら恥ずかしがりすぎー」

「だからのばらじゃ…やっ…!お、お前らあっ!覚えてろよ!」


道具袋の中身をぶち撒けたまま戯れ合う三人、と言っても一人は完全なる被害者でしかない。

きちんと整頓し終え戻ってきたクラウドはそれを見るなり、何をしているんだ、とげんなりと溜め息を吐いた。








フリオのパンチラは妙にエロい。




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