暢気と陽気でツーステップ
 小学生のころに、彩刃とであって以来、ずっとずっと一緒にいて。だからこそ、もちろん、高校だって同じだった。俺は、掟を守ることと同時に、彼の付き人のような存在でもあったわけだから、四六時中ついてまわるのは、当然なのかもしれない。(だからこそ、つらいんだけど。暴発しそうなんだけど)

 だから、登校もずっと、一緒。同じ時間に一緒に家でて、駅行って、電車乗って、降りて、学校まで歩いて、玄関行って、教室まで歩いて、ドアを開ける。そっからあとは、「東堂」と「灯野」だ。

 昔決めたことだ。確か、中学生くらい。
 ほかの男子同士は、名字で呼び合っているのに対して、俺たちだけは「譲刃」と「彩刃」周りに、怪しい関係だああだこうだいわれてしまえば、それは事実だし否定しようがなかったので、言われる前に、対処してしまうことにしたのだ。
だけれども、当主に、お互いが、下の名前で(なんせ東堂家には、東堂がいっぱいいる)俺は、彩刃のことを様付けして呼ぶことを命じられた。流石に学校では、様付けなんてものはしてなかったが。だから、学校では、当主の目なんて行き届いてない。せめて、と、おもって、学校だけでは、名字で呼ぶ。そういう決まりをつけた。

 それを言い出したのは、俺だったけど。
 理由としては、周りが名字で呼んでいたというのもあるし、あとは、学校ではそこまで彩刃と仲良くしていなかった、というところだろうか。友達の質も違った。俺はどちらかというと、ふざけあったりしたり、ばかみたいなことして、先生に怒られるようなタイプだった、が、反対に彩刃は、先生も好きそうな優等生だった。だけど、自然と周りに人があつまってくるような、とにかく、特別だった。(だいたい、美形だし)今とかわらない立ち位置。とにかく、違うんだ。そんな奴と俺が、学校でつるんでたって、おかしなだけで。俺は、だから学校では自然と距離を、中学の時からおき始めた。(そのころから、東堂のことはすきだった。四六時中一緒なんて、もう、これ以上ないくらい幸せだけど、不幸だったから、わざと、はなれた)

 
 呼び方の変化。
 それは、高校でも続いてることだ。


「灯野、おはよう」
「お、いいんちょ、おはー」

 教室の扉を開ければ、一番後ろの扉側の席に座る委員長が俺に声をかけてきて、俺もそれに対して、答えた。俺は委員長のちょうど前の席だから、そのまま席に向かったし、東堂は窓際の前の方の席で、ほぼ対角線上の座席。だから彼も、無言で、そのまま席に向かう。それに俺は何も言わない。委員長も、いつも通り、普通にそれを、スルー。


「灯野くんって、毎朝東堂くんと一緒に登校するけど、家ちかいとか?」
 ふと、席の近い女の子に声をかけられて、その目がきらきら、と、輝いていることを目ざとく見つけてしまった。しんでも一緒に生活してます、なんて、いえないだろうなあ。

「まー、そんなとこ」
「えー、いいなあ」
「東堂ん家でっかいよ」
「ぼっちゃん?!」
「あははー」

 そうやってわらいあってると、委員長がふいに、東堂の方をみあげて、ぼんやりつぶやいた。

「かっこいいよなあ、あいつ」

 女子は、必死にうなづく。


 ふいに、触れた唇は、あいかわらず、乾燥していて。唇をさわりながら、彼をみれば、なんとなく、目があったきがして。ああ、もう、なんか、なんなの、さ。

 
(…女子か…俺は、!)

 目ぇあっただけでどきどきとか、なにそれ。どんな少女漫画?砂吐きそう。砂はきそう。
 
 自分の甘さに反吐がでそうで。周りの女子は「めえあった!」とか、なんだか騒いでいて。委員長は「ひゅー」なんか、いってて。心臓はもう、こわれそうで。だから俺はじょしかっつーの。

「東堂のことすきなんだ?」

 委員長のそんな、軽快なリズムにのった、声がきこえた。

 え、ばれた?なんて一瞬思うも、女の子の声がすぐにきこえて、「ないしょだよ?」なあんて、きれいにはにかんだ。「どこがすき?」なんて、会話を繰り広げる二人。聞きたくてしかたない、委員長と、しゃべりたくてしかたない女の子。ぼう、っと、その姿をながめて、やはり、東堂は、好かれてる、なんて、呑気に思った。



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