甘くて、苦い。
 すきですきでたまらない人がいる。

 その人は今、目の前に居て、俺のことをみている。そうやって唇と唇を押しつけあえば、口の中には甘味が波紋するはずなのに、ひたすら、苦くてしかたないんだ。
 これ以上ない幸福のはずなのに、胃の中に涙が溜まってるようなんだ。


 目の前にいる、大好きな人。毎日毎日、俺はキスをする。甘かったり、苦かったり、情熱的だったり、義務的でもあったり、憧憬のように、作業的で、習慣的に、和やかでもあって、激しく、毎日変わるそのキス。時たま、研ぎ澄まされた刃のように。俺は毎日彼とキスをする。


 だいすきだって、いえないまま。


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テーマ「人外ファンタジー」
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