二十歳
 キスをしながら考えた。

 彼のこの体質はどのようにすれば治るのだろうか。

 確かに、先代はもうこの体質ではない。
 どこかで、この体質はなくなるはずなのだ。でもそれを俺は終わり方を知らない。期間なのかはたまた何かをすれば治るのか、分からない。それを今までなぜ疑問に俺は思わなかったのだろうか。


 解放されたとき、俺は息が上がっていた。心臓が体中に急速に血液を流し込む。だけど俺の頭は冷えていた。さえていた、だから、口を開いた。


「掟はいつ、終えるのですか」


 キスをしなければ生きていけない体質は、いつ、なくなるのか。


「…いつ、ね」

 意味深に彼は言葉を紡いだ。
 その先に何を吐き出すか、その言葉を聞いた時、絶句するしかなかった。




「子供を授かった時かな」



 東堂家は20歳になると、成人の儀というものがある。東堂家の一族は生まれた時から婚約者が決まっており、20歳に結婚する。その夜に成人の儀というものがあり、つまりは初夜だ。セックスする。そして子供を身ごもるのだ。

 それのこと、なのだろうか。


「二十歳ってこと?」
「違う」
「え?」
「子供を授かった時、じゃあないね。正しくは、初めて体をつないだ時?」


 脱、童貞ってこと?


「ざっくり言えば、中出しした時」


 …は?


「分かった?」

 うなづくしかなかった。
 じゃあ、二十歳じゃなくてもいいのだ。もっと早くてもいいのだ。彼が、そういう仲の人を作ってしまえば、


 じゃあ、早く、告って付き合って、ヤりゃあいいじゃねえか。つうか、彩刃にならば股開く女なんて腐るほどいるだろう。こんな気持ち悪い関係を早く脱したいならばなぜ早く、しないのだ。行動しないのか。

(反面安心したこととしては、彼が今まで誰とも体をつないでないと分かったことだ)

 そんなことで喜ぶなんて、あきらめれるのなんて、いつになるのだろうか。


 あたまがくらくらする。
 ついていけない。あたまが、思考が、何もかも。

 心臓も呼吸も、すべて。


「彩刃様」
「早く、結ばれることをお祈りします」


 彼のためにも、自分のためにも。


 二十歳になれば彼には婚約者ができる。二十歳になれば確実に解放される。だけど、それまでにこの感情が爆発しないか心配だ、あと、たった3年。それが、とてもとても長く、苦しく、そして短く思った。


 あと思っていられるのは3年、その前に好きな人と体をつなげれば、お役御免、だ。会うことは、きっと、もう、ない。


「あなたの、従者として」


 笑うしかない。

 彼の好きな人、彼の体をつなげる人、彼の婚約者は、俺ではないのだから。


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bkm


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