否定の言葉を投げかける
 放課後、俺と東堂はいつも一緒に帰る。

 これは東堂だからよくある話なのだが、放課後に女の子に呼び出される。されることは告白だ。


「おお、東堂もてるねー」

 教室は3階。窓の下をのぞきこめば学校でのそういうスポットを覗き込める。だから当然、東堂もそこに呼び出されていた。

「今月何人目?」
「さあ?」
「まあ、二人は確実だよなあ」

 実際は3人。みんなとってもとってもかわいい女の子ばかりだった。まあ、東堂に告白するなんて、自分に自信のある子ばかりに決まっているのだけれど。

「灯野は、告白とかないの?」
「ねえよ。俺がもてないのしってんだろ」
「え、灯野って女子と仲いいからもてるのかと思ってた」
「嫌味か畜生!」

 クラスメイトの頭をたたけば周りからも笑い声があがった。たたかれた本人であるクラスメイトもへらへらと笑う。
 窓際の席に座る俺はぼうっと、東堂が告白されている光景を眺めていた。(はたから見たら、うらめしそうに見えるかもしれない。)

 その光景から目を離し、目の前に座るクラスメイトの顔に意識を映した時だった。

「おい、」

 窓から半身を乗り出した格好をしたそいつは、完全に東堂と女の子からすれば盗み見しているのがバレる格好だった。何をしだすのかと思えば、


「ひゅーひゅー!」

 他のクラスメイト(うちのクラスはノリがいい。よく先生に悪ノリしているのを注意される)もそれに加勢して、窓際から声を飛ばした。女の子からすれば、はずかしくていらついて仕方ないだろう。ああ、かわいそう。
 俺はそれをただ傍観するだけだった。東堂がどんな反応をするのだろうか、と思った。「やめろよ」と笑顔で言うのだろうか、はたまた女の子に「ごめんね」なんていうのだろうか。正解はどちらもだった。

 やめろよ、と言われたクラスメイトは笑いながら、窓際から離れて行った。そのあと、女の子に向かって何か言っているのが分かった。おそらく謝っているのだろう。

 そのあとだった。

 

(なんで、こっち見たんだよ)



 意味が分からなかった。
 東堂がこっちに気づくなんて、まあありえない。だけど、確実にこっちを見ていた。ここは三階。なんで、わかんだよ。



「そういえば、灯野くんって、彼女いるの?」
「はあ?」

 近くにいた女子に聞かれた。

「いるわけねえじゃん」
「本当?!」

 なんで、そんな驚くんだ…?やっぱりもてなさそうにみえんのかね、俺。

「じゃあ、すきなひとは?」


 あそこで今告られてる奴です。
 なんて、言えるはずもない。男同士だ。今告白してる可愛い女の子みたいにでっかい胸も長い髪の毛も曲線美も何も持っていない。

 むかついてきた。


「いる」
「え?」
「いるよ、すきなひと」

 俺に質問を投げかけてきた女の子は唖然とした顔でこちらを見ていた。少しだけ微笑んで見せれば「マジで?!」と、大きな声をあげた。

 それを聞いていたクラスメイトもうわーだのぎゃーだの誰誰?!だの何かしら騒いでいた。俺にすきなひといちゃだめなんでしょうか。

「誰?」
「いや、言わない」

 というか、言えない。


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bkm


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