君へ
 俺は歌手だった。
 小さいころから歌うことが大好きで、自分で言うのもなんだがそれなりに才能はあったとおもうし、努力も怠らなかった。だから、成人したころにはそれなりに有名な歌手だったし、CDも売れていた。そんな時だった。

 声帯を摘出した。
 歌いすぎで、喉ぶっこわして、声帯をとった。当然もう、声はでなかったし、歌うことなんてもっての他だった。
 とれないコミュニケーション。歌えない歌手。

 用済み?不燃ゴミ?まあなんだっていいけど、見放された、そう、思った。(だけど君だけは違ったよね)




「いればいい。そこにいてくれればいいんだ。歌えなくても、喋れなくても、自殺なんてしないで。僕の側にいて、笑ってくれるだけでいいんだ。君は生きてる存在意義がないって嘆いていたよね?じゃあ今から君の存在意義は僕の隣で笑っていること。だから、お願い、ずっとずっとずっとずっと、幸せでいてね。幸せになってね。幸せに、するから。幸せになろう?」



 男同士だとか、ヒモだとか、それプロポーズじゃん、とか。どうでもよかった。そんくらい、嬉しくて。


「なかないでよ」

 そうやって頭を撫でる君に「嬉しくて泣いている」と伝える術はないけど、もう充分、幸せだよ。


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bkm

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