アリア
「ピアニッシモワン、ひとつ」

 コンビニでタバコを買う。お金を払って、そのまますぐにコンビニを出た。駐車場で待っている連れ。


「おまえ、なんでそんな女物の吸ってんの」


 奴の部屋についてから、俺はタバコに火をつけた。
 たしかに、目の前の男がすっているのはマルボロだ。(ちなみにマルボロは"Man Always Remember Love Because Of Romance Only"の略だという説もある)



 ベランダから上る、紫煙、ふたつ。
 紺碧の空には三日月、ひとつ。


「あー、なんでだろ」

 自分でも、わからない。
 正しくは、理解したくない。認めたくない。意地、プライド、そういうもんじゃなくて、俺の中にある小さな倫理観。


「俺さ、男だよな」
「なにいってんだよ」
「男に抱かれたい」
「…え?」
「壊してほしい、女みたいに、奇声あげて、イきたい」


 そんな、深層心理。
 理解不能。


「なァ、」

 横にいる男に顔を近づけた。
 こぼれた、灰。それがベランダに落ちて、俺は足で踏みにじる。



 小さく囁いた。嘯くように、嘯くように。




「だいて」


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