さくら、さきそう?
※NLとみせかけたBL





 桜は満開。気温もちょうど。


 お花見という名の新歓コンパで俺は泥酔中。


「だからウーロン茶にしとけっつったじゃん」

 遠くのほうでみんながああだこうだ言っているのが聞こえるが、それが俺の頭には文字情報としては入ってこない。

「あーすまん…」

 一年生からも「大丈夫ですか」と声をかけられるが、ぶっちゃけ大丈夫ではない。頭ぐわんぐわんするし、はきそう。ってかさっきはいた。

「三年がこんなぐてんぐてんなるなんて思わないよ普通…」
「こいつ酒きらいなんスよ。甘いの嫌いだからチューハイだめだし、苦いのも苦手」
「からいのがすきです…」
「もー、だまってていいよー」

 ブルーシートの上でぐてんぐてんになる俺を心配そうに見つめる先輩や同級生、そして後輩。なんだか失態をみせて申し訳ない。もともと、うちのサークルはあまり飲み会をしない。でもその飲み会を断りまくっていても、違和感はない。なにしろ年に数回しかしない。だけど新歓はさすがに断りきれない。一年生と二年生(今は四月になったばかりで二十歳がいないこともあるけど)ウーロン茶、三、四年生は強制でチューハイだった。


「でもよっぱらってないんだね」
「あー…思考は、しっかりしてるな」
「でも頭ぐわぐわでしょ」

 同級生の女子が、みんなで騒いでいる輪を抜け出して俺が寝ている横でウーロン茶を飲んでいた。そして俺に水を渡してくれた。

「のめる?」

 その言葉に手を動かして否定を示せば、「どうしよう」と、困った顔をしていた。

「枕くれないか」
「あー…ないけども、コートとか、膝とかでいい?」


 膝?


「は、」
「冷えるとまずいからコートかけるよ」



 え、えええええええ。

 ちょ、おま、え。


 初、ひざまくらです。しかも、女子。
 ど、ど、どうすれば。いいんだ…?俺草食すぎて、内心めちゃくちゃあせってる。でも俺無愛想で有名だからそれは悟られないだろう。(影で平成の武士だとかいろいろ言われているのは知っている。)



「水、どうしよう」


 彼女は片手に紙コップを持っていた。

 彼女は、「ごめんね」といいながら、紙コップの水を口に含んだ。



「目、つぶって」




 ――ま、まさか。



 うそ、うそうそうそうそうそうそ…!童貞の俺にはちょっとこれは、え、千才一隅のチャンス、…っ!



 やわらかい唇がふれ、口を開けば、冷たい水が流れ込んできた。あああああやって、しまっ…た。周りから「きゃー」だの「うおおおおお」だのなんだの声がする、って、みられて、んの…か…?



 は、っとなって目を開けば、想像していた黒髪ぱっつんボブの同級生の顔はなかった。



「っ?!」



 目の前にあったのは、明るく染められた茶色の髪。長い睫がとじられて、すこしだけふるえていた。でもこれは、どういうことだ…っ



 唇が離れた瞬間俺は「うわああああああああああああ」よくわからない奇声をあげた。



「な、な、なん…っ」
「水のみたかったんでしょ?」
「そう、だけど…!」
「なんでオレかって?」
「…っ」
「のませたかったから」


 にこり、と笑う顔はにくたらしくて、にくたらしくて仕方ない男の姿だった。


「どういう意味…」
「それは考えて」


 周りは「もういっかい!」だのなんだのいっているけど、それは無視。てか、男とキスしてしまった。公開処刑で。


「もっかいのむ?」
「自分でのむわ…」


 頭がぐわんぐわんする。あとすこしだけ、動悸が早くなったのは気のせいだとだれかにいってほしい。


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