天文学部に、所属するわたしにとって星というものは熱中できる趣味のひとつである。田舎にあり、山にも海にも近いわたしの学校に夜に忍び込み星を眺めることが天文学部のなかでブームになっていた。
夏休みのある日、わたしは学校へ忍び込んだ。それはいつものことだから罪悪感や、ばれたらどうしようなどという不安感は全くなく、星を見に行こう、と単純に思いついただけだ。まあそれだけ。だからどちらかといえば、わくわくしていた。
「あ」
屋上に行ってみれば、見慣れない人がいた。天文学部でないことはたしかだった。
「椚…?」
わたしの名前をそう呼ばれてはっとした。同じクラスの男の子だった。なんかやたらイケメンだからなんとなく嫌煙していた。(わたしは友達が少ないし、友達付き合いというやつが苦手だ。)
とりあえず、別の棟の屋上に行こうとおもい、わたしは無言でひきかえそうとした。
「え、無視?」
もういちどいうが、わたしは友達付き合いというやつが苦手だ。友達ではない、人付き合いが苦手なのか。ここはこえをかけるとろだったのか。
「すんません」
「あ、そういうつもりじゃなかったんだけどね」
じゃあなんなんだ。
「椚はなんでここに?」
「星を見に」
「星?」
「天文学部だから、わたし」
「じゃあさ、あの明るい星ってなんてゆうの?」
指をさした光はとてもあかるかった。
「人工衛星」
「は?」
「どこの国のかはしんないけどね」
じゃああれは?と指をさしたそれも同様だつた。なんだかわたしが申し訳ない気分になる。
「かなしくないの?」
そうこえをなげかけられた。なにが?とかえしたいのはやまやまだが、さすがにいいたいことがわかったから、わたしはおとなしく答えることにする。
「心配かな」
「なにが?」
「星がきえちゃうことが」
いつか、あのあかるさに、星は負けてしまうのだろうか。田舎のこの地ですら星がみえなくなってしまうのだろうか。そうは思った。でもわたしに人工衛星をどうこうすることなどできやしないのである。
「かなしいね」
「うん」
冷ややかななつのかぜがわたしを、よこぎった。