こはくいろ
「お前の目、茶色いな」

 ふいに目の前の男が宿題をしている手をやめ、机ごしに俺の目を見つめる。

「黒のカラコンほしい」
「えー、でもカラコンこわくねえ?」
「コンタクトが怖い」
「だから眼鏡なのか」

 けたけたと笑う目の前の、黒色の目を俺は近づいて覗きこんだ。机に両手をつき思い切り、近づく。
 距離は近い。
 おおよそ、10センチあるかないか。

「黒色ずりい」
「でも俺はすきだけどな」

 お前の茶色の目。


 近づいて、焦点の結べなくなった、顔。はぜる熱。唇同士が、衝突して、すぐに離れた。


「こういうのもできるし?」

 悪びれもせず笑う彼の笑顔をみて、なんだか無性に照れて、俺は目を伏せて、眼鏡を外した。




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