「ごめんねえ、俺女の子にしかたたないからあ」
こんな閉鎖的な全寮制男子校という空間で、同じ性別の男子に告白されたとき、俺はいつも同じ言葉を吐き出す。例えどんなにかわいくても、俺好みの顔をしていても、俺はいつだってその言葉を口にだす。だからなのかいつのまにか、俺は女のセフレが多いという、わけわかんない飛躍しすぎな噂が学校中に電波していて、そういうイメージがついてしまった。払拭することが不可能な、確固たるそれ。『ちゃら男』『下半身バカ』『ヤリチン』どれもこれも下品極まりない。けれど、否定するのもなんとなくめんどくさく、俺はそのイメージを突き通し続けた。
本当はただの童貞で右手が恋人なんだけど。
あと女の子にしかたたないなんてことはない。むしろ、あの人にしか、たたない。このところの、おかずはずっとあの人だから。ああ、ほんと、すき。
「たのもーう!…って、あれ?」
いつもならば誰かしら仕事をして、書類とにらめっこしているはずの生徒会室。けれどその日は誰もおらず、がらん、としていた。
俺は内心悪態をつきながら、会計の仕事の書類が積んである、俺の定位置の席に座ると、机に頬をついて、足をぶらぶらとさせた。机がいつもより、心なしか冷たいような気がした。
目に入るのは、窓に背を向けている会長の席。夕焼けが反射して、いつもならばきれいなきれいな会長の姿を拝めるのに。
ふと、思いたって俺は立ち上がると、会長の豪華な席に座った。ふかふかで、座りごこちがいいのに、どこか緊張してしまう。会長は毎日ここから世界をみているのか、そう思うと急に、熱く、なって。
やばい。
完璧、た、った。
会長にしか不能なはずの俺のジュニアは会長に関しては敏感すぎるらしい。反応よすぎでしょ。会長の席すわっただけで半勃ちとか。
誰も、こないよね?
トイレに行けばいいものを、何を思ったか俺は、その場てベルトを外しはじめ、ズボンのジッパーを下げた。下着の中からイチモツをとりだし、それを両手で握れば、手の中でそれが嬉しそうに、汁を流した。
「ん、あ、…」
両手で上下に動かしながら、擦ったり、亀頭をなでてみたり。部屋でする時はこんなことで感じたりしない、例えば汁が垂れただけで、大きく反応してしまう。
「あ…あぁ、んっ」
会長。会長。会長。
ゲシュタルト崩壊する勢いで頭の中に溢れるのはその二文字だけ。
「かいちょ、う…っ」
亀頭の小さな穴に爪をたてて、ああ、でる、そう思った瞬間だった。
根本を強く握られた。
目を瞑っていた俺が驚いて目を開ければ、会長が目の前に居た。
「ふ、え、」
なに、これ、現実?
「女の子でしか抜けないんじゃなかったか?」
「ひ、…ンあッ」
会長が根本を握る手とは違う手で俺のイチモツを擦った。やばい、きもちよすぎる。
「なんで俺の名前呼んでんの?俺でぬけんのか?」
ばれてる。
一瞬理性がそう気づくけど、すぐに会長が俺のを追い詰めはじめるもんだから、何も考えれなくなって、俺はただひたすら喘いでた。
「てめえ、俺のことすきなのか?」
「ン…あ、ふぁ…っ」
「答えろよ、会計」
「や、ぁ…っ!」
きゅう、と根本を握る力を強められて、その上、俺を追い立てる手は動きをとめて。快感が突如姿を消した。
「言ったら、イかせてやる」
「…あ、」
いきたい。けど、会長がすきなんてそんな、いえない。だって今までの嘘が帳消しだ。だけど。だけど。だけ、ど…!
「あ、すき…、すきい、会長、すき、ん、だから…ッイかせて、え、あッ」
「よくできました」
耳元でそう囁かれた次の瞬間、根本を握る手が外され、亀頭に爪をたてられて、瞑った目の裏では星が飛んでいた。
「は、あ、…ん」
「きもちよかったみてえだな」
「……かい、ちょ」
だんだん覚めていく熱とともに、覚醒していく脳細胞。あああああ、告白、しちゃった、よ。
「会長、へんじ、は」
そう訪ねてみたものの、正直怖かった。だって、絶対拒絶される。だからいわなかった。拒絶されるのが怖くて怖くてしかたないんだ。
どう、しよ。ききたくない。けど、ききたい。耳をふさいでしまいたい。
ぎゅう、と目を瞑った瞬間だった。
「今後の努力次第か?」
「…え?」
「まあ、のちのち」
「…なんそれ、」
「今は返事しない」
「身構えた俺はなんだったの?!」
あーもう、力ぬけた。ありえねえ。ありえねえ。俺ははあとため息をひとつ零すと、髪の毛に柔らかな感覚がして、キスされたことに気づいた。
「体の相性はよさそうだけどな」
「会長、最低」
俺より下半身バカじゃね?こいつ!ああもう。何それ。何それ。何、これ。
「会長、すきです」
だから俺は背伸びして、会長の額に唇を落とせば、会長は満足げに笑った。
(これだけでこんなにも満たされるから、今は、このまま、)