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俺が卒業する頃、入れ替わりで弟達が高校生になる。2人が自立するのはまだ何年か先だ。

今は俺の我侭で地元から離れて寮生活をさせてもらっている。それだって本当は大きな負担だったはずだ。卒業して、就職か進学。いずれにしろ少しでも近くにいたほうが母さんの力になれるんじゃないかって。

今回のように何かがあったときにすぐにでも駆けつけることができるように。


「それは、この先もうずっと鷹臣は地元から出ないっていう話?」

「……ううん。少なくとも、弟たちが自立するまでは。その後は今ほど働かなくてもよくなって、母さんも楽になるだろうし。」


俺の言葉を聞いて、勝威さんは少し考え込んでいるみたいだった。

数年先まで一緒にいられないっていう宣言なんだ。どんな答えが返ってくるか。緊張で胸が締め付けられた。


「お前が決めたことだったら、仕方ないよ。」


僅かな沈黙の後に勝威さんが口を開いた。布団の中で見つめ合う。今この瞬間、どんな気持ちでいるのか、表情からは読み取れない。


「……仕方ないっていうのは。」

「止める権利はないって意味。」

「自分で言い出しておいてなんだけど、何年も離れても勝威さんは平気?」

「もし俺が平気じゃないって答えたら?それはつまり、お前の中には"別れる"っていう選択肢も用意されてるってこと?」



言葉が詰まった。

会えない空白の時間。

不安なのは、気持ちを繋ぎとめておけるかってこと。


勝威さんの気持ちを繋ぎとめておく権利が、俺にあるのかってこと。


「……ごめん。」


小さく呟く。


「ごめん。勝手なことばっかり言ってるけど、それだけは嫌だ…。」


未来の約束をするとしたら、それはどんなものだろう。男女の関係と同じようにはできない。それでもやっぱり無理だ。勝威さんと他人になってしまうことを、俺自身で選択することなんて絶対にできない。


「頭の中がぐちゃぐちゃなんだ。本当はずっと一緒にいたいよ。勝威さんが先に卒業して、2年離れるだけでも苦しいのに…。」


勝威さんの親指が、俺の唇に触れた。キスをする前の合図みたいに、いつもこうやって最初に触わる。

唇を重ねながら体勢を変えて、俺の上に覆いかぶさった。

背中に手を回して浴衣を掴んだら、お風呂上りだからなのかな、汗で少し湿っていた。


「会いに行くから。時間見つけて。」
「……うん。」
「それで、何年先になるかはわかんないとしても、いずれ一緒に住めばいいだろ。そんなに難しく考えなくていいよ。」


なんてことないように勝威さんが呟く。

漠然と、俺が一番欲しがっていた言葉を。


答える代わりに強く抱きしめ返すと鼓動の音が伝わってきた。


勝威さんの手が下に伸びて、浴衣の隙間から手を差し入れる。腰を浮かすとそのまま下着を脱がされた。


「鷹臣、そういえば。」
「なに?」
「ローション持ってきてないよな。」


……そっか。

そういうの全然考えてなかった。
代わりになりそうなものも無いな。

やめたくない。っていうのが正直な気持ちだけど。さすがに最後までは無理かと思う。


「……勝威さん、今日は俺がしてもいい?」


いつもしてもらってばかりだから。
今日くらいは。


組み敷かれていた状態から起き上がって、足を投げ出して座っている勝威さんの浴衣の隙間に手を差し入れて下着をずらす。

口内を唾液で濡らしてから、少しだけ勃っているそれの先端に唇で触れた。根元から舐め上げると、少しずつ硬くなっていく。


「……鷹臣、腰上げて。」


ふいに、勝威さんの指が俺の背中に触れた。言われた通り勝威さんのを咥え込んだまま上に突き出すように腰を上げると、背中に置かれていた手が腰へ移動して、さらに先に伸びていく。


「……んっ、」


浴衣の上から割れ目をなぞられて。布越しの僅かな感触だけで、鳥肌が立つくらい感じてる。


「……はぁ、…っ」


もっと深く咥え込んで、さっきよりも早く頭を動かすと勝威さんの身体が僅かに強張る。


「……ちょっと痛いかもしれないけど。」


浴衣がめくられて下半身が冷えた空気の中に晒された。そしてすぐに、後ろの入り口に勝威さんの指が触れた。

濡れてる。勝威さんの唾液かな。少しずつ、ゆっくりとそれが中に入ってくる。いつもより感じる異物感。

上と下。両方で勝威さんを感じて。どうしようもないくらい興奮しているのが自分でもわかるから。


「しょ、ういさん…っ…」
「ん…?」


動きを止めて口を離すと透明の糸が伝った。勝威さんの指は入り口辺りで留まっている。俺が痛くないように、気遣ってくれているんだと思う。


そうなんだけど。
なんかもう我慢できなくて。


「……ゆび、おくまで、してほしい…」


かすれるような声だったけど、勝威さんにはきちんと聞こえていたみたいで。


「あっ…!や…、」


指がいつも触れられるところまで届く。

ローションとか使ってないからなのかな。中で指の形がいつもより鮮明に伝わる気がして
ちょっと角度が変わるだけでも敏感にそれがわかる。勝威さんにも気持ちよくなってもらいたくて、目の前のものにまた夢中でしゃぶりついた。唾液が口から溢れて顎を伝ってく。


「鷹臣、前は自分でできる?」


勝威さんの言葉に小さく頷いてから、右手を自分の下半身に伸ばした。自分でしているところを見られるのなんて、いつもなら恥ずかしくて絶対できないのに今日は何の抵抗もなくそれを受け入れてる。

すごいな。羞恥心って、気持ちいいことの前では簡単に無かったことにできるんだ。


「たかおみ…」
「…んっ!」


勝威さんが俺の名前を呼んで、口の中に熱いものが吐き出された。それをそのまま飲み込んで、その後すぐに俺もイった。額から雫が落ちて、全身汗をかいていることに今さら気づいた。


「風呂入った意味無くなったな。」
「……明日、朝風呂入ろうね。」


心地よい倦怠感。枕元の照明を落すと部屋の中は暗闇に包まれた。そのまま二人、布団の上に横になる。胸元に顔を埋めると安心して、自然と瞼が重くなる。

カーテンの隙間からは月明かりが差し込んでいた。

夜が一秒ごとに深まっていく。
さっきよりも、眠ってしまうのが怖いとは思わない。


1年後、5年後、10年後。
今この瞬間の気持ちを、どれだけ覚えていられるだろう。


過ぎていく時間。
その先の未来へ続く約束。
大切にしたいと思うこと。
なんてことない距離。
変わって行く世界。

ずっと同じようにはいられないことはわかってる。


一緒にいたいだけ。本当に、ただそれだけだった。

それだけでよかった。







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