行き先
特急列車と新幹線で数時間。朝早く学園を出発して到着するのは昼過ぎの予定。
1泊2日だからちょっと慌しいけど予算との兼ね合いで仕方ない。格安ビジネスホテルに連泊するよりは、温泉旅館に1泊の方がいいだろうってことで。
まぁ、これ全部高遠さん判断の事後報告なんだけどね。
そして最後の最後にようやく告げられた行き先は、ちょっと意外な場所だった。
「今更だけど旅行先、ほんとに京都でよかった?修学旅行とかで行ってるんじゃない?」
旅行前日。2人一緒に荷物の準備をしているときに縁が尋ねる。高遠さんが決めた卒業旅行の行き先は冬の京都だった。
「確かに中学のときに行ったけど、それは他のみんなも同じじゃないの?」
「うん。だからどうして高遠が京都にしたのかなって考えてたんだけど。僕さ、中学のとき修学旅行行ってないんだ。……あの頃は行く必要もないって感じて。高遠もそれ知ってるからそれで京都にしたんじゃないかと思う。」
あー…。そういうことか。うちの高校は修学旅行無いから、みんなで賑やかに旅行するっていうのを体験させたかったのかも。高遠さんだったら考えそうなことだ。
「でもさ。もしそうだとしたらそれに鷹臣たちを巻き込むのは変な話だから…。」
「いいんじゃない?修学旅行じゃ時間無くてあんまり回れなかったし。俺、4人で行くの楽しみだよ。」
それは特に気を使ったわけじゃなく。本心からの言葉だった。高遠さんのやることはいつも無茶苦茶だけど気持ちはわからなくもない。なにより4人でどこかに出かけるのは初めてで、勝威さんにはちょっと申し訳ないけど俺自身このイベントを結構楽しみにしているから。
縁はまだちょっと何かを気にしているような表情だったけど、ありがとう、って小さく呟いた。
「縁は寒がりだからあったかい格好していった方がいいよ。冬の京都は底冷えがするってよく言うよね。」
「うん。食べ物の名物ってなんだろ。にしん蕎麦?あ、湯葉もかな。」
「都路里の抹茶パフェとか有名だけどね。」
「……それいいね。」
温泉も久しぶりだし。
どうしよう。話してるうちにすっごいわくわくしてきた。
明日の出発に備えて今日は早く寝よう。
体調は万全にしておかないとね。
残された時間に、一つでも多く楽しい思い出を残せるように。
[ 49/56 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]