光
[ TAKAOMI Side. ]
「鷹臣くん、おはよー。あ、いい匂いする。」
次の日の朝、朝食の準備をしていると高遠さんと勝威さんがやって来た。必ずではないけど、休みの日にはこうして朝から部屋へ来ることも多い。
多分だけど、寝起きの悪い勝威さんを高遠さんが強制的に起こして、こんなに朝早く無理矢理連れてきている。
「あ。高遠おはよ。」
「あれ、みどりちゃん休みなのに朝早いね。」
「うん、昨日はよく眠れたからね。」
シャワーから上がった縁がバスルームから出てきた。そういえば休みの日にこんな早くから行動してるの珍しいかもしれない。
バスタオルで髪を拭きながら真っ直ぐ冷蔵庫へ向かい中からミネラルウォーターを取り出す。
「鷹臣の抱き心地がよかったからかな。」
ペットボトルの蓋を開けながら、さらっと放った縁の発言に勝威さんと高遠さんの動きが止まる。
え。ちょっと。なんかその言い方は、爆弾……
「痛い!!」
数秒の沈黙を破って高遠さんが叫んだ。勝威さんの拳が後頭部に振り落とされたせいだ。
「え?なに!?なんで今俺が殴られたの?」
「縁殴っても喜ぶだけだろ。」
「えぇー…。理不尽…。」
やましいことなんか何もないけど、勝威さんから向けられる視線が痛い。
「鷹臣はもうちょっと危機感もてよ。縁が変態だっていうの充分知ってんだろ。」
「大丈夫だよ勝威。みどりちゃんは節操のある変態だから…。」
「節操あっても変態は変態だろ。」
「……あのさぁ、もうちょっと言い方とかないの?」
縁がイラっとした顔で2人を睨む。
平和だな。これ以上ないくらい、平和な朝だ。
「ねぇ今日なんかする?せっかく休みだしさー。天気いいし。海とかどう?みどりちゃん海嫌い?」
「えー…、海かぁ…。」
「海、どうですかねぇ…。」
「お前このメンツで行って盛り上がると思うか?」
「あ、うん。ごめん想像したら全然楽しそうじゃなかったわ。やめよ。」
夏休みも残り半分。
外は快晴で、海に行くには最高かもしれないけど無理はしないほうがいいと思う。
いつも通り。それでいいよ。
それでもきっと、笑いながら毎日を過ごしていける。
共有できる時間は、1秒1秒終わりに近づいているとしても。
夏の朝。悲しいことも嬉しいことも、日差しの中に溶けていく。
窓の向こうの、望んでいたような青空を眺めながら、大切な人たち過ごすこれから日々のことを考えている。
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