はじまり








[   TAKAOMI Side. ]





「なんか朝起きたら兄貴いないなぁとは思ってたけどさぁ。高遠まで3人で仲良く鷹臣の実家泊まってるとかなんなの?僕だけ除け者なの?僕も鷹臣の実家泊まりたかったんですけど。」


夕方頃に勝威さんと2人で寮へ戻ると、縁は不機嫌そうな顔、そして高遠さんは少し気まずそうな顔をして部屋で待っていた。

帰る途中に食材も買い込んできたから、すぐに作れる簡単なメニューで夕食を作り久しぶりに4人で食卓を囲んでいる。


「いや、あの状況で俺がお前も連れてったら頭おかしいだろ。」

「縁、それにうちきても何もないよ?」

「何もないかどうかは僕が決めるんだけど!」

「俺の家なのに…?」

「何もなくないよ、鷹臣君ちジェンガとか人生ゲームとかいっぱいあったよ!」

「……高遠さん、やめてくださいなんか逆に恥ずかしいんで。」


皆で泊まるには狭いだろうから「今度縁だけで遊びにおいで。」って言うと縁は小さく頷いた。立て続けに美形の友達ばっかり連れて行ったら母さんびっくりするだろうな。勝威さんを紹介したときも相当驚いてたし。


夕飯を食べ終えると窓の外はすっかり暗くなっていた。夏休み中でも寮の施錠時間は変わらない。会うのは1週間ぶりだろうし、夜になればてっきり縁は高遠さんの部屋へ行くのかと思っていたのに、高遠さんは勝威さんと2人で3年生寮へ帰って行った。


2人が帰ったあとも縁はゲームをして俺はなんとなくテレビを観て過ごして。いつも通りだ。縁の態度も。本当に拍子抜けするぐらいいつも通り。


そして日付が変わる頃。部屋の灯りを消してそれぞれのベッドに入った。


「鷹臣は今日、兄貴のとこ行かなくてよかったの?」


布団の中でうとうとし始めた頃、突然縁が話しかけてきた。

「え?うん、今日は別に…。」
「よかったよ、今晩は鷹臣に話したいことがあったから。」
「話?」


仰向けになって天井を見つめ、縁の言葉に耳を傾ける。


「鷹臣が帰ってくる前に、高遠と話したんだ。鷹臣も気にしてるんならきちんと話すよ。兄貴とのことを。」


不意打ちのような縁の言葉に心臓がドクンと鳴った。縁と勝威さんのこと。ずっと気になっていたことなのに、本当に聞いてしまっていいものなのか、いざとなると恐怖が勝る。



「……結論から言えば、僕は勝威のことが好きだったと思う。それは多分、兄弟としての感情を越えて。」



真っ暗で静まり返った部屋の中、少しかすれた縁の声。



聞いてしまった。知ってしまった。縁の口から、遂に。

胸が痛いくらいに締め付けられる。好きだったという事実にだろうか。それとも勝威さんのことを名前で呼んだことにだろうか。


俺が何も答えられずにいると、縁はゆっくりと話し始めた。


「大体の話はもう聞いてると思うけど。僕が初めて勝威に会ったのは8歳のときだったんだ。父さんが急に、"友達の息子"だって言って家に連れてきたのが勝威だった。

僕はあの頃本当に暗かったから友達なんかいなくて学校でも一人で。だけど人見知りする僕に対しても勝威は優しくしてくれたよ。

姉さんは年が離れてたし遊ぶのはいつも僕と勝威の2人だけで、家族以外の人とあんなに仲良くなれたのは初めてだったと思う。」



俺の知らない2人の繋がり。

淡々と話す縁の声は、少しだけ震えていた。



「勝威は僕にとって、初めての友達だったんだ。」







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