夜に








[   TAKAOMI Side. ]





「鷹臣くん、おかえり〜。あ、勝威も。」


勝威さんと2人で俺の家へ帰ってくると、出てきたときと同じように高遠さんは双子の弟たちと一緒にリビングで遊んでいた。ただしテレビゲームではなくてトランプで。


「つーか高遠、お前適当なことメールするんじゃねぇよ。」

「ごめんごめん。でも結果的に俺のおかげで仲直りできたでしょー?あ!これで俺上がりー♪希一くんの負けー♪」

「えぇー、俺もあと1枚だったのに!」

「人んちの実家で馴染み過ぎだろこいつ…。」


間違いなく出てくるとき以上に打ち解けている3人。今時小6と高校3年生がババ抜きでこんなに盛り上がれるのものなのか。すごいな。

「瑞貴、母さんは?」
「疲れたからって、もう部屋で寝てるよ。」

時計を見ると23時をまわった頃。寝るにはまだちょっと早いけど、準備だけしておくか。

「ちょっと俺、布団用意してきますね。」
 
「あ。鷹臣くんありがとう。ねぇ、勝威……今俺のこと邪魔だと思ってるでしょ。」

「……思ってねぇよ別に。」

「悪いけど俺は絶対に気を使わないからね…。今日だって川の字の真ん中で寝るつもりだから…!」


えー…。なんかそれは嫌だな。言ったって実家だし勝威さんとなにかするつもりなんか最初から無いけど。なんとなく嫌だ。

というか弟たちのいる前であまり際どい話をしないで欲しい。


結局のところ俺の部屋にはベッドがあるから、俺がベッドに寝て、床に敷いた2組の布団にそれぞれ勝威さんと高遠さんで寝てもらった。

狭い俺の部屋に2人がいるというのにものすごく違和感を感じる。2人が寝静まった後もなんだか落ち着けず、しばらく眠れずにいた。


仰向けになって、ぼんやりと天井を見つめる。


帰り道。勝威さんは少しだけ縁の話をした。自分の胸の内を伝えることができたから、以前と違って素直な気持ちで聞くことができた。


勝威さんは、縁とは最初から兄弟だったわけじゃないから、やっぱり少し一般的な兄弟とは違うかもしれないと言った。


勝威さんが初めて会った小学生の頃から中学を卒業するまでの縁は、今とは比べ物にならないくらい内向的だった。

勝威さんの言葉を借りて言うと「他人に対する壁が尋常じゃなく厚くて、普通に社会的生活を送れるのかどうかも心配するレベル」。


そういう縁をずっと見てきたから、どこか過保護に感じる部分があるかもしれない。けれどそれはあくまでも弟としてであり、それ以上でも以下でもないと。


勝威さんはそう話してくれた。


ただ一度だけ。

縁が勝威さんに「兄弟以上の好意をもっている」と、人から言われたことがあると言った。それを言った誰かについては詳しくは聞かなかったけれど。


「俺自身でそう感じたことは無いし何の根拠も無い言葉だと思った。ただそういうことが昔あったから、急にお前が縁と俺のことを気にし始めたときに、思い出して動揺したんだ。本当のところなんて俺にもわからない。ただ、」


縁が今みたいになれたのは、高遠の存在が大きいと思う。俺は別に何もしてない。


最後に勝威さんはそう言った。


あれ、高遠さんに伝えてあげればいいのに。そうしたらあの人の不安だって少しは和らぐかもしれないのに。勝威さんの性格からして絶対に言わないだろうけど。



「勝威、もう寝た?」


突然、寝ていると思っていた高遠さんが勝威さんに声をかけた。勝威さんの反応はない。そうだよな。寝つきのいい勝威さんのことだから多分布団に入った瞬間からもう眠っていると思う。


「ねぇ、寝たの?起きてたりしない?」
「……うるせぇな!寝てるんだから静かにしろよ!」
「ほらー。起きてるじゃん。」
「起こされたんだよ。…触るなよ気持ち悪いから!」
「ちょっと、高遠さん!」
「あ、鷹臣くんも起きてた。」


部屋の中は真っ暗でベッドの上からじゃ下の様子はよくわからない。修学旅行じゃないんだからさ。


「俺明日朝一で寮に帰るけど、勝威はどうするの?」

「実家戻ると逆方向だからな…。面倒だしこのまま俺も寮に戻るかな。鷹臣は?」

「それなら俺も明日戻ろうかと思うんですけど、行かなきゃいけないところがあって。そこに寄ってからにします。」

「じゃあ2人で一緒に行ってくれば?俺は一人で先に帰ってるから。」


高遠さんの提案に少しドキリとした。本当に個人的なことだから、勝威さんを付き合わせていいものだろうか。


「鷹臣の用事だろ。俺行ったら邪魔なんじゃねぇの。」
「そんなことないです、勝威さんが嫌じゃなければ。」


明日の予定も立て終わりしばらくしてまた静寂が訪れた。2人とも眠ったみたいだ。


俺もそろそろ寝ようと寝返りをうつと、枕元に置いてあった携帯が点滅しているのに気が付く。メールが届いたのは1時間程前のようだ。


開いて見ると縁からだった。添付されていた画像は、学園祭で撮ったあの写真で。


……送るって約束してたの覚えていてくれたんだ。


慌ててすぐに返事を送る。写真ありがとうって。


それから、明日寮に帰るねって。



明日朝早く起きて、勝威さんとあいつのところへ行って。そのまますぐに帰ろう。そうしてまた、いつもの日常に戻るんだ。











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