口で








[   TAKATO Side. ]




ノックをするかどうかで迷って、結局合鍵を使うことにした。部屋へ入ると鷹臣くんの姿はもうない。入れ違いで勝威と待ち合わせしている談話室へ向かったんだろう。


「高遠…?なんでいるの?」


勝手に入ってきた俺を見て縁が驚いた顔をしている。ソファに座っていた縁の隣に腰を下ろした。

「さっきまで勝威と一緒に清風のとこにいたんだけど。勝威が鷹臣くん呼び出すっていうからその間俺もみどりちゃんに会いに来ちゃおうかなと思って。」

「妙だなぁとは思ったけど。なんでこんな時間に鷹臣は呼び出されたの。」

「お母さんの話がね、途中だったんだって。」

「ああ…。そうなんだ。」


詳しいことは縁に聞けって言ってたけど。本当に聞く必要があるか、少し考えてやめた。

結局のところ人んちのプライベートな話だし。無理に聞き出すことはない。あえて今である必要はないと思う。


「そういえば高遠は実家帰らないの?」
「俺はめんどくさいから。どうせ清風も帰らないだろうし。」
「ほんとに仲いいよね。小林と。」
「やきもち妬く?」


からかい半分で尋ねると、縁は表情も変えずちらりと俺の方を見た。


「妬くよ。僕だって、人並み程度には。」


そっか。うん。人並み程度にね。まぁ仕方ないか。縁は俺に対する服従心が強いだけで独占欲は別に強くないから。


「……みどりちゃん、さっきの続きしてもいい?」


まぁ、でも。今のはちょっと可愛かったよ。


立ち上がり縁の足元に座り直して、履いているハーフパンツを下着と一緒に脱がしてから両足を持ち上げ肩へのせた。縁は大人しくされるがままになっている。


「逆じゃなくていいの。」
「うん。たまには。足痛そうだしね。」
「できなくもないよ。」
「いいんだよ、俺がしたい気分だから。」


まだ勃っていない縁のものをできるだけ奥まで咥えこむ。俺が口でするの久しぶりだなぁ。縁は前よりも後ろが好きだからフェラだけってあんまりやらない。ローションなくても大丈夫かな。


「…あ、あぁっ!」


しゃぶりながら口内で唾液を作り、垂らしたそれを使って穴の方へも指を差し込むと、俺の頭の上に置いていた縁の手に力がこもった。


「ていうか鷹臣…っ、戻ってくるんじゃない…?」
「大丈夫。チェーンかけたから。」


帰ってきたらすぐやめてドアを開けてあげれば良いよね。少なくとも鉢合わせなんてベタなことは避けられるはずだし。


「ん、あ、はぁ…っ、あ、あ、…!」


後ろを弄り始めた途端先走りがどんどん溢れてくる。咥えるのをやめて先端を舌でぐりぐりすると、すごく気持ちよさそうな声を上げた。

一番いいところにはわざと触れないようにして浅い部分で指を動かすと、物足りないような感じで腰を動かしている。


「もうちょっと奥がいい?」
「あ、ああっ!!」


焦らしてる間に鷹臣くんが帰ってきちゃっても可哀想だから。今日はすぐイけるようにしてあげたほうがいいか。


「や、ああっ、そこ、もっと…して…!」
「うん。イきたくなったらいってもいいよ。」


ソファを汚さないように射精に備えてもう一度咥え直そうとしたとき、縁が俺の頭を抑えてそれを制止した。


「たかとぉ、ねぇ、やっぱやだ…っ、指だけじゃ…」
「挿れたいの?」
「あし、いたくてもいいから…」


あんまり時間ないかもしないけど。指を抜いて、両足は肩に乗せたまま立ち上がって縁に覆いかぶさり、座っていた体勢からソファの上に押し倒した。

ベルトを緩め自分のを取り出して、あまり慣らす時間がなかったから少しづつゆっくり挿入すると、縁は満足そうに少しだけ笑った。


「みどりちゃん、キスは?」


下半身を奥へ進めながら顔を近づけると、促されるまま舌をのばして俺の唇を舐める。


「みどりちゃんの味がするでしょ。」


深く唇を合わせる。唾液が零れるのも気にしないで、貪りつくように。腰の動きはいつもより少し早い。今、鷹臣くんが帰ってきたとしてもここまできたら止めることはできないし。俺だって最後までしたいし。


「あ、ん…っ!たかと、ぉ…いきそ…っ」
「我慢できる?俺もあとちょっと…」
「ん…っ!あ、や、むりかも…っ!あ、あぁっ!」


縁が先にイった。まぁ無理だろうなって思ってたけど。ピストンは止めず縁に続いて俺もすぐイきそうになったところで思い出す。


「あ、そうだ。今日お風呂入れないし中に出さないほうがいいんだ。」


そのまま射精しそうになったのを急いで抜いて、縁のお腹の上に出そうとしたとき、


「…りう…っ、くち…。」
「え?あ、口?」


咄嗟に縁の口内に突っ込んでそのまま出した。吐き出されたものを全て飲み込んだのを見届けてから抜いた。間に合って、よかった。ひとまず帰ってくるまでに服着せよう。

身体を抱き起こして脱がせたハーフパンツと下着を履かせてあげる。その間、縁は紅潮した頬のままぼんやりとした目で俺を見つめていた。


「小林の部屋に戻るの…?」
「うん。そだね。泊まるわけにはいかないし。」
「高遠、あのさ。」
「なに?」


いつもの無表情のまま。だけど何かを考え込むように言い淀んでいる。


「僕のことでなにか、嫌なこととかないの。」
「……え?どうしたの急に。ないよ、そんなの。」
「そう。ならいい。」


どうしたんだろう。このタイミングで、なんでこんなこと聞くんだろう。


保健室で妙な態度をとってしまったせいかもしれない。もし俺が勝威へ本気で嫉妬しているっていうのがバレたら。ふざけた態度をとることで誤魔化してきたけれど、本当はそれが一番怖い。縁が勝威を意識することによって、本人も気づいていない感情に気づかせてしまうんじゃないかって。


「……じゃあ、俺もう行くね。明日また来るから。」
「うん。おやすみ。」


多少の動揺を残したまま、ひとまず今日は清風たちの部屋へ戻ることにした。最後までヤるつもりはなかったんだけどな。これじゃただヤりにきただけみたいだ。



顔が見たかったんだ。なんとなく。それだけだったんだけど。



勝威たちはどうなったんだろう。きちんと話せたかな。



消灯された暗い廊下に、俺の足音だけが響いている。



言葉にできない漠然とした不安を抱えながら高校生活最後の夏休みが始まろうとしていた。






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