学園祭





忙しい日々は風のように通り過ぎて、あっという間に学園祭当日を迎えた。

外部の人を呼べない内輪だけで行われる1日目に関しては正直そうたいして盛り上がらない。皆何かを温存するように。ある意味予行練習のようなものだろう。

全ては2日目の今日のために用意されたものなんだ。

友達の友達、さらにその友達。つまりは、普段は知り合う機会の少ない同年代の女の子たちとの出会いのために。


「鷹臣、もう交代して大丈夫だって!」
「おおー、わかった。」


俺のクラスの出し物は完全に女子狙いで今流行のパンケーキ屋。コストもあまりかからないし作るのも簡単だし、結構いい選択だと思う。その証拠に女子高生を中心に客足はずっと途切れない。

朝からずっと作り手をしていて昼過ぎにやっと交代か。別にいいんだけどね。女の子をナンパしにいく予定もないし、家族が遊びに来ることもないし。


「洋介はどうするの?」
「俺彼女と待ち合わせしてる!」


あ、そっか。洋介は他校の彼女が来るんだった。写真でしか見たことがないけど、結構可愛かった気がする。


「鷹臣は?勝威さんのとこ行くの?」
「うーん。小腹減ったしとりあえず何か食べに行こうかな。」


勝威さんときちんと約束はしていない。それでも一息ついたら連絡するとは言われていた。

昨日もちょっとドキドキしつつ3年生の教室を覗きに行ったけれどまぁ女装なんかしているわけもなく。勝威さんは普通にギャルソンの衣装で接客していた。

「まだ1日あるしギリギリまで粘る」って、キャバ嬢みたいな格好をした高遠さんはまだ諦めていないようだった。

俺はギャルソン姿が予想以上に格好良かったから、正直もう満足している。

「何食べようかな、結構お腹すいてるし…。」

パンフレットに載った校内の地図を見ながら混雑した廊下を歩く。すごいな、ナンパしてる奴らばっかり。男子校の学園祭なんて女の子のほうだってある程度期待して訪れているはずだけど。

ふと地図から顔を上げると、進行方向にいつもの2人の姿を見つけた。


あ、縁と高遠さんだ。高遠さんも今日は制服なんだな。
って……あれ?


ロングヘアの黒いワンピース。
だけど180cm近くある高遠さんと同じくらいの背丈。



長い黒髪の隙間から見えたのはよく見慣れた横顔で。



変な汗が吹き出る。化粧をしているから大分雰囲気は違うけど。



でもあれは。
え、ちょっと待って。嘘でしょ。



「勝威さん!?」



思わず叫んでいた。俺の声に反応して数名の学生がこちらを振り返る。
続けて縁と高遠さんも。



そして、頬に影を落しそうなほど長い睫をした勝威さんも。



勝威さんは俺の姿をとらえると、おそろしいくらい綺麗になった顔を不機嫌そうに歪め、10cm以上はありそうなヒールを鳴らしながら大股で近づいてきた。



あれ、ヒール?ヒールの靴を履いてこの身長ってことは



「うわっ!!」



突然胸倉を掴まれ体が宙に浮きそうになる。


もしかしてこの人。



「なんであたしが勝威なの。」



ドスの聞いた声。でも確かにそれは、間違いなく女の人の声だった。






[ 28/56 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -