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「あ、幸村くん」
「あれ、××幸村くんと知り合いかよい?」
「うーん、実は他人だったりして」
「何言ってるの、××。幼馴染みでしょ」
「世界は自我とそれ以外で出来ている。そう考えると君はその他大勢だ」
「幼馴染み?へえ、幸村くんに女の幼馴染みねえ…」
「丸井くん、君は何が言いたい?え?ああ、この世に別れを告げていたのか」
「お前何言ってんの!?」
「まったく、××は丸井をからかって遊ばないで」
「くすくす、大丈夫だよ幸村、私と彼は所謂恋人同士だからね」
「…………え」
「は!?何だよいそれ、××!」
「…丸井くん、あの夜を覚えていないの……?」
「はあ!?」
「…丸井?」
「あの夜、あんなに私を求めてくれたじゃない…っ、愛してる、大切にするって…」
「…………丸井、あとで、いや今から話があるんだけどいいかな?」
「え」
「ちょっと××、丸井借りてくよ」
「ちょっ、待っ…」
「…なーんてことになったら私立海にいられないねえ、いやあ嘘でよかったー…ってあれ?おーい幸村くーん、ゆっきー?…いないや」
無口な眠たがり主
「おーい、××」
「………」
「おい、聞こえてんだろい?おーい」
「……うるさい」
「、え、ちょうるさいって酷くね?おい××、」
「…あ、いた××。起きてる?」
「…ん」
「あれ幸村くん?え、なに××と知り合い?」
「え?…ああまあね。幼馴染みなんだ」
「ん、幸村くん、なに」
「ああ、××のお母さんに忘れ物の弁当届けてって頼まれてね。今日朝早かったの?」
「…?…あ、今日の宿題、学校に忘れてたから」
「ふうん、じゃあこれね」
「ありがとう」
「…幸村くんの女子の幼馴染み、ねえ……」
「丸井、何が言いたいの?」
「え、あ、いや別に…意外だなーって。幼馴染みでも中学高校って学年上がるにつれあんま関わりなくなるじゃん」
「そう?そんなことないと思うけど。…ね、××」
「……?…ねむい」
「……、…いやでもほら、幸村くん部活やってるし、何かと忙しいじゃん」
「別にテニスは昔からやってたし…、…ああ、そういえば××もちょっとだけやってたんだよ、テニス」
「マジかよい!?…運動駄目そーな雰囲気してんのに…」
「結構上手かったんだけどね、俺とも試合してたし」
「……因みに勝敗は…」
「え?勿論俺が勝ったけど」
「………」
「ねえ××、もうやらないの?そうだ、久し振りに俺と試合…」
「…やだ」
「んー、じゃあダブルスにしよう。俺と組んでね」
「……試合相手が丸井くんなら考える」
「ええ!?ちょ、××お前何言って」
「いいねそれ。もうひとりはどうしようか、久々に仁王で遊ぼうか」
「…におう?」
「ああ、××は知らなくていいよ、ただの潰す相手だからね」
「………」
「……おい××、どうにかしろよ、このままじゃ俺ら殺されちまうだろい」
「ひとの安眠を妨害した罪は重いのである」
「何言ってんの!?」
「じゃあ今日の部活が終わってからにしようか。××それまで待っててね?」
「ん」
「ちょ、××!…ほら夜暗いし!な!?」
「大丈夫、俺が送っていくから」
「お隣さん」
「ちょ、ちょ、待っ!」
「拒否権は無いよ、丸井。…あ、仁王にも伝えておいてね」
「え、ちょ、幸村くん!?」
「あ、もう休み時間終わっちゃう。じゃあ後でね」
「………××、覚えてろよ」
「……ざまあ」
「!?」
「………、…おやすみ。ぐう」
嘘しか言わないさかさま主
「あ」
「ん?どうしたんだよい、××」
「んにゃ、他人様を見なかったのでつい」
「…いっつも思うけどお前何言ってんの?」
「あ、××。ちょうどよかった」
「あれ、幸村くん?××と知り合い?」
「丸井くんよりは遠い関係だよ」
「近い、だろ。幼馴染みなんだ、俺たち」
「へえ、幸村くん女子の幼馴染みとかいたんだ、意外」
「くすくす、褒められてるよ、残念だね幸村くん」
「…幸村くん、俺××が何言ってんのかさっぱりなんだけど」
「××の言葉は反対の意味で捉えるといいよ。今のは『貶されてるよ、良かったね』っていう嫌みね」
「ふふ、言葉遣いの綺麗な私はこうした方が悪いかなあって」
「…面倒くせえ」
「それは残念」
「そんなことより××、ちょっと頼みがあるんだけど。聞いてくれない?」
「良いよって言ったら?」
「…どう捉えたらいいのかな」
「くすくす」
「…(意味分かんねえ)」
「…プリッ」
「…………」
「ピヨッ」
「………」
「あれ、仁王××と知り合いかよい?」
「ほー、やっぱりこいつが××って奴か」
「…丸井、君はどうして楽なことに私を巻き込まないのだろうね」
「なんじゃ、確かに変な言い方じゃが構われたいミーハーじゃき、構っちゃだめじゃよ」
「…自意識の全く無い有能さんが何を言わずとしているのか私はよく分かるよ」
「……なんじゃ気持ち悪い。話しかけないでくれるかの」
「…仁王、違うんだって。逆、こいつところどころ逆のこと言ってんの」
「随分ネガティブな発言じゃな、普通に俺らに構われようと媚売ってるだけじゃろ」
「…あ」
「ったく仁王は…、…あれ、幸村くん」
「やあ丸井、××いる?」
「了承する」
「酷いな、まだ何も言ってないじゃない」
「言わずとしていないことくらい分からないよ」
「へえ、」
「ヤナギレンジ、とか名乗らない女が後に会いに来なくてね、」
「……………」
「…何言ってるんじゃ、こいつ」
「合宿の手伝いをするなと。真面目なのか」
「…ふざけてはいないと思うけれどね。あと推薦したの俺だし」
「予想外れか。まだまだ怒らないよ」
「××が怒ると俺の精神が保たないんだけどな」
「あっそ」
「幸村、こいつもミーハーと同じじゃと思うぜよ」
「馬鹿なの?死ぬの?」
「ぴ…ピヨッ」
「というわけで了承するよ。じゃあね、幸村くん」
「えー」
「…かわいくないな幸村くん」
「…嘘でもちょっと傷付くから止めて」
「……お前さん」
「喋れ」
「俺たちに近付くんじゃなか。気持ち悪いぜよ」
「ちょ、仁王…」
「仁王、何言って…、…あ、××がキレた」
「へ?」
「プリッ」
「…黙れっつってんのが聞こえねえのかこの銀髪野郎。耳腐ってんのか?ああ!?」
「…ピヨッ」
「何がピヨッだ黙れっつってんだろうが!私はさっきから断るっつってんだろ!ふざけんな面倒事にばっかり巻き込みやがって!てめぇその鬱陶しい尻尾引き抜くぞコラ」
「………」
「…ちょ、仁王黙っちゃったけど何あれ。幸村くん止めねえのかよい」
「ああ、あれ××の素だから」
「え」
「あの短気と口の悪さを隠すための嘘だから、俺も仕方なく許容してるんだけどね」
「…あれが素とか……」
「だいたい、近付いて来たのはてめえの方だろうが!ここはお前の教室か?違うよなあ?お前がわざわざここまで来たんだろ?で?私に近付くな?馬鹿かこの自意識過剰能無し野郎が。こっちの台詞だ、金輪際私に近付くな。半径五メートルに侵入したら目玉ひとつ潰してやるよ」
「………」
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