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「…あとは達也さんが帰ってくるだけね」
「そうだね。」

時刻は午後9時30分

「あ。時間だ。達也さん帰って来たわ」
「え?」


”あ。時間だ。”
ってどうゆうこと?
まるでこの時間に必ず帰ってくると決まっているような。
そんな言い方だった。

お姉ちゃんは玄関の方にぱたぱたと小走りで歩いて行く。
少し笑い声を混ぜながら。


なんだか。不思議な感じだ。
変な感じがする。違和感がある。
異様な感じがする。





異常を感じる。








「あかね?おいで。紹介するね。 
 私の旦那さんの」




突然の結婚。




    家の前の表札。



   旦那さんだけの写真。





決まった時刻の帰宅。




これってつまり。










「達也さんよ」









お姉ちゃんは本当は
達也さんとなんて…
”結婚していない”って事でしょ?








玄関にはお姉ちゃんただ一人。
旦那さんなんて。達也さんなんて。
どこにもいない。見えない。



””存在しない””





「お姉ちゃん…
 そこには誰もいないよね…?」



「え?あかね?何言ってるの?」


きょとんとした表情が私を見る。
まるで私が”それ”を見えていないような”ふり”をしているのが不思議とでも言うように見ている。



私には分からなかった。
お姉ちゃんの目に映っているものが。


「お姉ちゃんには…何が見えてるの?」



そこには、誰もいないって。



その言葉が喉につまって出てこなかった。
こんなことを言ったって
きっと理解してくれないだろうと
そう私は確信したからだ。



  





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