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彼女はずっと泣いていたから、オレは少し謝るのをやめて
ただただ見ていた。
それしかすることが出来なかったから。

抱きしめてあげたかったけど、彼女が今悲しんでいるのは少なくとも
オレのせい。
だからそんな無責任なことは出来なかった。

でも学校には行かなきゃね。遅刻しちゃうと目をこすって
無理やり涙を止めながら彼女は虚ろに歩く。

オレは無理しなくてもいいのになと思ったが
その言葉も喉に詰まって出てこなかったから
胃にしまいこんだ。

彼女の後姿を見ていたらオレまで泣きそうにった。





そのあと、無言で歩いた。


彼女が口を開くまでオレは黙っていた方が
いいと、それが一番正しい判断と思った。


そんなときだった。
歩道橋をもう少しでわらり終わるというところで
彼女はプツンとまた何かが切れたように
泣き始める。

彼女は立ち止まってオレに背中を向けながら言った。



―消えたい。死にたい。
 …無理なことは分かってる。
せめて、彼のことを忘れられたらな…―


―なんてね―


オレは彼女のその言葉を聴いて突発的にこう思ったのだ。


”忘れさせてあげる”


なぜそんな風に思ったのか分からないけれど、
体が自然に動いた。




オレは右手を伸ばして、
そっと優しく背中を押した。

もちろん階段にいるときに背中をおしたらどうなるか
もちろん落下していく。
彼女は「あ」と一言声を出して歩道橋の一番下まで落ちていく。

彼女の頭からゴッという音がして一瞬ぴくっとして
数秒して動かなくなった。

オレはそんな彼女を見て平然と携帯電話を取り出して救急車を呼んだ。

”女の子が血だらけで倒れています。すぐお願いします…”


オレには確信があった。

死にはしない。
ただ、記憶に欠陥が出来るだけ。
これで忘れられるだろう?





  





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