一片の | ナノ



吹っ飛ばされたり、吹っ飛ばしたり。結果的に凉ちゃんが圧勝しそうになった所でうちら3人がグルでかかる。だんだん良心が痛むと、凉ちゃんが可哀相になって仲間割れが始まり、けんけんを場外へ吹っ飛ばす。キャラを変えステージを変え、何回も相当な熱戦が繰り広げられた。

「あ、もうこんな時間…」

凉ちゃんがぽつりと呟くと、皆が時計を見る。その隙に、けんけんが白石さんにやられた。

「あっこら!白石!お前!」

もう時計は6時すぎを指している。最近は日も短くなってきたので外は既に真っ暗だった。

「はは、堪忍堪忍!俺も、もう帰らなあかんしな」
「そか。礼華は?」
「お母さんがけんけんのお母さんに渡したいものがあるって言うてたから…それ待ちやね」
「わかった。二人とも気をつけてな」
「はい。お邪魔しました!」
「また明日な」

二人が帰って、うちとけんけんが残る。また新しくステージを変えて戦おうとけんけんがコントローラを動かした。

「あ、そういや」
「何?」
「そういう服、珍しいなと思て」
「文句あるん」

自分にしては低めの声が出て、自分自身もびっくりした。うちを怒らせてるっちゅー自覚を持ちながら、段々とニヤニヤしはじめるけんけんがウザくて仕方ない。

「ぷふっ、べっつにー?あぁ!白石がおるからちょいおしゃれしてきたん?」
「……謙也にはわからんもん」

そう、わかるはずがない。
いつまで経っても凉ちゃんに告ろうともしない謙也なんかには……!

「ヘタレの謙也には!わからんやろ!!」

こんなに怒鳴っておきながら、自分がよくわからない。なんでマジギレなんかしとるんやろ。涙が出そう。なんで、こんな、苦しくならなあかんの。優しく笑って話しかけてくれる白石さんとか、楽しそうに凉ちゃんと話す白石さんとか、見てたら苦しくなる。よく、わからない。

「……スマン。からかい過ぎたっちゅー…話やな……」
「あ…いや…うちもいきなり怒鳴ってもうたし…ごめん……」

気にしてへんよ。って言うてくれるけんけんは優しい。凉ちゃんの事が好きで、うちがからかうとすぐに頬を赤く染めて怒るくせに、うちが同じようなことされて、マジギレしたら素直に謝ってしまうのはヘタレっていうのもあるんだけど。けんけんは優しいから肝心なときに気を遣ってくれる。そういう優しさは人一倍やと思う。
こんな友達を持てて、もちろん幸せなんやけど。幸せなんやけど申し訳なさが先に立つ。
気遣かってくれるけんけんや凉ちゃんにまで当たってまうとか……。
ほんまに……恋って、苦しいわ。



苦い、苦しい
(いつになったら解放される?)






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