一片の | ナノ


そんなこんなしているうちに二年になってしまった。日本の冬は初めてだったので驚いたのが"クリスマス"も"お正月"も祝うことだろうか。クリスマスの前には天皇誕生日もある。それでも街は商機とばかりにイルミネーションと共にイベントを祝う。
お正月も本当は宗家に帰らなくてはいけなかったのだけれど、やっぱり私が嫌がったので父と母は行かず、宗家は親戚の年寄りばかりが集まったらしい。

それから春が来て、噂に聞いていた桜も咲いて花見に行った。小さい頃見た記憶はもう忘れ去っていたのでまるで初めて見るような反応に母が笑っていた。

それから、二年生。

景吾に関わって良い事も悪い事も一度に起きたような気がする。
笑う事は確かに減ったけれど、ドイツにいた頃より充実もしていないけれど。それでも日本の雰囲気は好きだった。

「何、笑ってんだ?」
「別に、なんでもないけど?」

今は授業終わりだ。起立、礼の声でお辞儀をしていたら隣の宍戸くんが尋ねてきた。

「……相変わらず変な奴」
「ぼそっと言っても聞こえてるし。というか宍戸くんの方こそ変だし」
「どこがだよ?」
「なんとかだぜ!みたいなとこ?」
「意味わかんねー…」

呆れたように溜息を吐きながら宍戸くんが教科書を机の中に仕舞うと、その横から影がさした。
銀髪にクロスのネックレスを首から下げた子。二年生にこんな子いたっけ、と思ったと同時にその子は「宍戸先輩!」と明るい声をあげた。

「おお、長太郎!」

私は空気を読んで宍戸くんとの会話を断ち、次の授業の準備をはじめた。




そうしてみんな忘れてくれる
(後輩…か。早いなあ)


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