一片の | ナノ


窓から朝日が差し込み、私は早く目覚めてそれをずっと眺めていた。
新しい家には慣れた。やはり新築というので綺麗だと思うし、私の部屋も既にコーディネートされていた。
自分でやりたいと思う反面、めんどくさくて出来上がっているのを見たいという気もしていたので万々歳ではあるけれど。今はそんな明るい気分になれない。

「振っちゃったなあ。」



ピンクに統一された部屋の一部である、ベースがピンクのベッドで仰向けになる。ファンシーなピンクに反して私の気持ちはブルーに染まっていた。
だって私はどんな顔をして会えば良い?この家に来るのも景吾から逃げたようなもので、学校で会って会話が出来たら無神経にも程があるというものだ。

「燈子ー、起きなさーい」

「はーい」

母の声にベッドから立ち上がり学校に行く準備をした。行きたくないけれど会わなければいい話だ。景吾とクラスは違うから確率は低いはず。

「よし」

制服のブラウスに袖を通して、私は腹を括った。






「おはよっ!燈子、今日の数学の宿題やった?私まだでさ、ね、見せて!」

彩子は何時にも増して元気さを表にしていた。彼女のこういうオーバーな言動は無理をしている証拠なのだと最近気がついた。今度は何を塞いでいるんだろう。

「いいよ。そのかわり彩子の話聞くからね」

「……あはは、やっぱ燈子にゃ叶わないや」

新しい家から学校まで早く着くため、早起きして朝一番に来るのが日課になりつつあった。それにあわせて彩子も早く来るようになり、いつも朝は二人だけで話をしている。
朝の教室には誰もいない。それを見て彩子が「今日も一番乗り〜♪」と無理をして笑う。

「はい、これ数学の。たぶん間違えてるとこ多いけど」

「うん。ありがと」

「それで?今回はどうしたの?」

席についてノートを広げ、ひとつ落ち着いたところで話を聞いた。彩子は先程とは打って変わってモジモジしている。

「あのね、私、跡部くんに、告白する」

つっかえる言葉を喉の奥から搾り出して私にかけられた言葉はあまりにも突然で、しかし心のどこかでは当たり前だとも思えた。

「うん、がんばれ」

自分の気持ちに嘘はついてない。景吾にも彩子にも幸せになってほしいと心から思っている。それなのに心は今にも泣き出しそうで。
心の寄り処のない日々なんか覚悟できているつもりだった。

「燈子に言われたら出来そうな気がしてきた。ありがとうね」

「大丈夫だよ、彩子可愛いもん。私が男ならほっとかないよ」

「もー、お世辞は言わなくていいよ!」

「お世辞じゃなくても可愛いってば。で、いつ行くの?」

「お昼休み。成功したら一緒に帰るんだ!」




嘘の仮面を誰か引き剥がして
(嬉しそうな彼女の声が痛いの)


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