一片の | ナノ


今日からうちも晴れて四天宝寺中一年。灰色がベースのワンピースはぶっちゃけ気こなせずにいたらその辺の私立の制服よりダサいと思う。けれど着こなせれば結構かわええとはおもう。カーディガン着たりすればそれなりになるし。
……まぁ、そんな事は蔵と同じ学校に通えるならどうだっていいとも思う。
お昼一緒に食べる約束もしたし!めっちゃ楽しみや…!

「礼華ももう中学生か。ときの流れっちゅうのは早いな」
「そうですね。私だけおいてけぼりです。早く中学生になりたいなぁ」
「この一年もあっという間やろ。待ってんで。」
「はい!」

入学式が終わって蔵と謙也と凉ちゃんで集まった。うちもテニス部に入ってマネージャーになるから蔵と謙也とはいつでも会えるけれど、凉ちゃんはあまり遊べなくなってしまうかもしれない。それでも一年の辛抱だ。謙也が中学生になったときだってそう気にならなかったし、蔵と出会えたのも謙也が四天でテニス部にはいって蔵と仲ようしてくれたおかげやし。って、あかん。いつも思考が蔵にとんでまう。

「あぁ、そろそろ帰らないと。それじゃあ先に帰りますね。また遊ぶ時とか呼んで下さい。……礼華先輩、おめでとうございました!」
「おおきに。気ぃつけてな!」
「はい!」

凉ちゃんが帰ったあともたいした話もせず、うちらも「また明日!」とかいって解散した。始めての授業は早速その翌日からだからとスクールバッグに新しいノートと明日配られるであろう教科書を入れるバッグを入れて、ワクワクしながらベッドに入った。

「礼華、おはよー」
「おはよー、碧!」
クラスに入って席に着くと、最初に話しかけて来たのは昨日の入学式で隣になった吉田碧ちゃんだった。
呼び捨てでいい、と言われたので「碧」「礼華」と呼び合っている。
碧は私の後ろの席に腰をかけ、部活紹介の冊子を持ってぱらぱらとめくっていた。
「礼華は入りたい部活とかあるの?」
「あるで!テニス部のマネや!」
「ほぉ、マネか。私はテニス部に入るんだけど、礼華は男テニと女テニのどっち?」
「男テニやで」
「へぇ、好きな人でもおるん?」
「おん!彼氏が!」

そう言うと碧はびっくりした表情をして、「最近の子ってマセてるのねー」なんておばさんっぽい事を言う。マセてるってなんや。うちはちゃんと蔵の事好きなんやで!

「うちの兄貴もテニス部だからよろしくね」
「おん。まかせとき!」

胸を張って答えると、突如影がさした。中学生なのにピアスをあけているその男子は、碧にガンを飛ばす。

「あぁ、ごめん」

碧が席からどくと、男子が机の上に鞄をおく。見てくれはちょっと怖かったけども、うちのオカンの方がずっと怖いからあまり気にはならんかった。

チャイムが鳴って先生が入ってくれば、碧は自然と自分の席に戻っていった。一日目だからかホームルームは1時間目まで食い込んだ。2時間目、3時間目、4時間目も代わる代わる先生が来て、あぁ中学なんやなぁと感じる。小学校のころは同じ先生が全教科を教えていたからなんだかそれだけで賢くなった気がした。

で、やっと昼休み。お昼はやっぱ蔵と食べたいなぁとか思いつつその旨を伝えようと碧を見れば申し訳なさそうに話しかけてきた。

「ごめん、礼華。うち、クズ兄貴と食べなきゃダメっぽくて…」
「いや、うちも先輩と食べようと思てたから丁度よかったわ」

そういえば蔵は何組なんやろかと2階に上がる階段に脚を向ければ、すぐに聞き覚えのある声がした。

「……碧も同じクラスだ」
「へぇ、凄い偶然やな。」
「必然かもな」
「何クサイ事言うてんねん」

蔵と、男の先輩だった。どことなく碧に似ているから、この人がきっと碧のお兄さんなんかな。
……結構イケメンで第一印象はクール系。

だと思ってたんに。

「碧ーー!会いたかった!」
「外でやらんで。やめて。キモい」

碧を見つけるとすぐに抱き着いてそこから全く離れない。蔵に対して話す時と碧に対して話す時との差が激しくて、思わず「うわぁ」と言ってしまった。

「礼華もヒいてるんだけど」
「お昼どこで食べる?屋上?屋上行く?」
「おい聞け」

碧がそう言ってもお兄さんは全く聞く耳を持っていない。そこに蔵が口をはさんだ。というか動じない蔵がなんか凄い。

「屋上は俺らが行こ思てたんやけど」
「は?俺と碧の時間を邪魔すんな」
「はいはい、邪魔なのは兄貴だから教室で食べようねー」
「えっあっちょ、碧!」

碧はそのままお兄さんの首根っこを掴んでうちらの教室に入っていった。なんというか濃いお兄さんだ。

「ほ、ほな、屋上いこか」
「……あ、せやな」

心なしか蔵の頬が少し赤いような気がしたけど、うちの見間違いのような気もした。




四天宝寺中入学!
(あれでも律也はテニス強いんやで)
(えっ、うそ!!)


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