「ほれ、終了。」
白石さんの家の玄関に座らされ、されるがままに処置を受けていた。綺麗にテーピングされた足が、なんだか清潔なラッピングみたいに見えた。白石さんに触れられた先から熱を帯びては消えていくのを感じていたから、テーピングが終わると温さはそこから完全に消えていった。そんなことまで意識してしまうなんて、末期、なんやろな。
「……ごめん」
でも、こんな情けない自分を見せるのは嫌だった。好きな人の前で格好悪い所を見せるのは、嫌だ。
足をくじいて運んでもらうとか。失態すぎて笑えもしない。鼻がつんとして涙が滲んできた。格好悪すぎやろ。もう小6やで?人前で泣くとかないわ。
「謝られることなんかないで。別の言葉で何か言うこと、あるやろ?」
「あ……。ありがとう……」
でもやっぱり迷惑かけてもうたしと小さな声で言えば、また、あの時みたいに怒る。
「迷惑やったらここまでやらんわ。自分アホか。大丈夫なふりしよってからに。全然大丈夫やないやろ。心配かけんなっちゅーねん」
「……、」
「大体、俺がここまでしてやっとんのに何で気づかんのや…あほ」
それって、……そういうことなんやろか。それならうちは、自惚れてええんやろか。そういうの、嫌やわ。はっきり言ってくれんと自惚れたうちがあまりにも虚しい。
つっけんどんな態度ではあるものの、白石さんの態度はどう考えても…その…そういう意味にしかとらえられなくて。
自然と涙のかわりに顔が熱を帯びはじめた。
「……今日はもう帰り。また背負ったるから」
「え、あ……うん。ありがとう……」
また背中を向けて、うちを背負ってくれる。白石さんにおぶられてまた暗い道を二人で歩く。足音も車の音も蚊帳の外…まるでこの世に二人しかいないかのようなこの空間。来たときとは違って、今度は白石さんの心臓が鳴る音とうちの心臓がなる音でいっぱいだった。白石さんの体温が心地好い。けれど恥ずかしさからか居心地はあまり良くない。歩くたびに揺れるミルクティー色の髪から、シャンプーの匂いと汗の匂いが混じった匂いがする。
「白石さん、」
「……その白石さんてのも、他人行儀過ぎて嫌やねん。蔵ノ介でも蔵でもええ」
「うん。……蔵」
「なん」
「言わなあかん事、あるんやけど。うち、蔵が……」
不意に…蔵、が立ち止まった。なんやろかと思えば「顔、見たい」と言われて絞り出した蚊の鳴くような声で「うん」と答えれば、ゆっくりとうちを地面に降ろした。だいぶ痛みは気にならなくなっていたから、立つのは別に苦痛じゃなかった。
ゆっくり、蔵がうちの方を向いてくれて。しっかりうちの目を見て。
紅い頬も愛おしくて。誰にも渡したくない、たった一人だけの、君が口を開く。
「俺に先に言わせてや。礼華に先言われたら…かっこつかんやろ」
「……せやね。」
「礼華、好きや。付き合うて下さい」
「おん…私も、蔵のことめっちゃ好きやから」
やっと、想いが繋がったんだ、って。
拙い言葉で綴る恋
(私達はまだはじまったばかりで)
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あとがき
白石が若干ツンデレ属性ですね(笑)
かなり最後の方は急展開でした…。すみません。もっと話数を増やしたかったのですが、次を書きたかったので少し走らせていただきました。
時間軸は次からが原作になります。そして次からがメインです(笑)
でもこの章が一番力を入れた気がします。ここまでお読みくださりありがとうございました!
引き続きよろしくお願いします!