Reach out to the truth | ナノ
「赤也ー!」

部活が終わると何時もは先輩らと帰るけど、今日はコートを出たところで名前に会った。曰く、一緒に帰ろうということで。

「あー、じゃあ俺らはこれで…」
「なになに、赤也の彼女?」

二人で行こうとすると、丸井先輩が名前に興味を持つ。何となく嫌な予感がして、さっさと退散しようとしたら先輩らが既に名前に絡み始めていた。

「あ…じゃあ、一緒に帰ろうか。ね。赤也」

まるで名案とでも言うように名前が言うもんだから断れるはずもなく、内心で「(んなワケねーって…)」と思いながらも先輩らと一緒に歩いて帰ることにした。あとから考えたことだけど仁王先輩がいるのに良かったんだろうか。ふと仁王先輩を見ると柳生先輩が耳打ちをしていて。話しているのはひそひそ話なのにやけに自分にはハッキリ聞こえた。

「あの子、もしかしたら仁王くんと入れ替わっていた時に告白してきた子かもしれません」

名前はこの話を聞いていない。
柳先輩にいろいろ聞かれているみたいで、こちらを気にすることはまずなかった。
複雑な気持ちだった。柳生先輩が仁王先輩として名前を振ってくれたから、俺の彼女になってくれた。本物の仁王先輩が名前に興味をもって。名前が本当のことを知ったら。
そんなこと、あるはずないと思ってもちょっとした不安が背後についてまわる。「はぁ…」と自然に溜め息が漏れて今まで先輩と話していた名前がこちらに寄ってきた。

「疲れた?……もしかして、一緒に帰らない方が良かったとか…?」
「それはねーから。んないちいち溜め息なんか気にしなくていいって」
「そ、そう…?」

不安そうな顔をしていたからポンポンと頭を撫でると「子供扱いすんなバカ也っ!!!!」と手を払われた。周りを気にしているらしく名前の頬は恥ずかしさからか少し赤みを帯びていた。

「見せつけてくれるな、赤也」
「フられねーよーに頑張れよ」

先輩らに冷やかされて、名前は苦笑いしつつも照れて満更でもないような顔をする。
照れている名前を見ると、自然と俺も照れてしまって先輩らと別れるまでずっと冷やかされた。
その別れたとき最後にみた仁王先輩は意味深に微笑んでいて、背中がぞくりと粟立った。


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(鈍感少女と横取り狼)