Reach out to the truth | ナノ
学校に、行きたくない。
朝目覚めて何よりも先に思ったのがそれだった。不登校になってしまうのも皆勤が破られるのも嫌だったからちゃんと行くことにしたけど。
如何せん、ダルい。

「よっ」
「ああ…バカ也…」
「おい、それは流石に聞き捨てらんねえぞ!」
「…知らん…」
「大丈夫かよ…。世界の終わりみたいな顔してんぜ?」

電車の吊り革に全体重をかけるようにして手をかけていると、車両移動してきた赤也にばったり出会った。
赤也も吊り革にぶら下がるようにして手をかける。

「いつの間にか自殺とかすんなよ?」
「…多分しないよ…はぁ…」

自分じゃどうにも出来ないと思ったのか赤也はそれきり黙ってしまった。本当は私もちゃんとしなきゃなとは思ってはいるのに。心の何処かで掬いきれないくらいに落ち込んでいるから、私がいくら迷惑をかけないようにしたくてもベクトルは落ち込んだ方向を向いたままなんだよね。

「なぁ」
「…ん?」
「俺、お前にずっと黙ってたことあんだけどさ」
「なにそれ。私が怒ること?」
「いや…多分怒んねぇ。言った方がいいか?」
「そりゃ、もち」

相当覚悟が必要だったのか赤也はまた黙ってしまった。がたごと揺れるままに揺さぶらされ、私と同じように…けど違うふうに思い詰めた表情をする赤也は普通に見てカッコいい。黙ってればもっとモテるんだろうになぁ。幼なじみってだけで隣にいる私は赤也と釣り合わないなんてしみじみと思うし。
揃って黙ったまま、私はちらちら赤也の方を見ながら次の言葉を待つ。そうしてしばらく時間が過ぎるうちに、学校の最寄り駅に着いてしまった。それなのに赤也は降りる準備をする気配もなく、ぼーっと突っ立ったまま。

「バカ也」
「ん?…あぁ」

やっぱりなんか変だ。心此処に在らずといった感じで。
大丈夫かな、赤也。

通学路は歩きでも赤也はどこか遠いほうを見ていて、唯一校門前で発した言葉がこれ。

「今日、俺ん家来れたら来てくんね?」

了承はしたけれど、なんなんだろう。そんなに気まずいカミングアウトなのかな。




言い出すには難しい
(あ、いつの間にか)
(赤也のことばっか考えてる)