Reach out to the truth | ナノ
「あ、あの!仁王先輩のこと、前からずっと好きだったんです!付き合っていただけますか!」

その一言を言うのに何ヶ月の心の準備が必要だったっけ。っていうほどに私は恋愛に対して奥手だった。
憧れじゃなくてホントに恋したのは初めてだったから、私は初恋を大事にしたかった。したかった…うん。過去形なんだよね。所詮は。
私は絶賛失恋中です。

「仁王先輩…なんで…」
「あーもう俺の部屋でジメジメすんなっつの!」
「いいじゃん!赤也なんだから!心狭いとハゲるよ!」
「ハゲるか!」
「ああー…仁王先輩ぃい…」

幼なじみの赤也の家(そして赤也の部屋)でぐちぐち言ってみるものの、赤也は慰めるどころか私をのけ者扱いし始めた。
当の赤也はまた格ゲーやってんのね。あーあ、なんで赤也が幼なじみなんだろ。恋愛話とか苦手そうな奴じゃなくてもっとお兄さんみたいなタイプが良かったなー。例えば…仁王先輩みたいな。はぐらかすところははぐらかすけど、いつも核心だけは突いている。相談とかしたら頼れるだろうなって…。

「ああ…仁王先輩…」
「はぁ。いつまでその調子で俺に絡むんだよ…。だいたい仁王先輩、お前の事知ってんのかよ?」
「多分…知らない…。覚えてたらいいなって程度で」
「なんか接点あったのか?」
「体育館で吹奏楽のリハーサルやった帰りに楽器と譜面台と楽譜の冊子の束をいっぺんに持って帰ろうとしたら案の定途中で崩れて、その時に拾ってくれたのが仁王先輩だったんだよ!あの時の低音ヴォイスはまだ私の耳に感触として残ってるし!」
「…ふーん。もういいわ」

そう言うと赤也は不機嫌になったのか無言でゲームを再開した。
なんかこのままじゃ落ち込んでばかりで赤也に迷惑をかけそうだったから。私は立ち上がり、その辺に散らした私物を鞄にしまってそれを肩にかけた。

「もう帰んのかよ、」
「何、居てほしかったの?」
「んなわけねーだろ」
「はいはい、じゃあ帰るね」

赤也はゲームをポーズ画面にしてから、一緒に部屋を出て玄関の外にある門まで見送りに出てくれた。いつも思うけどこういうのはマメだよね。

「それじゃあね」
「次に顔あわせるときくらいには、機嫌なおして来いよ」
「それ明日じゃん。無理だって」
「無理って思うから無理なんじゃねーの。ま、いいや。気をつけろよ」
「うん、ありがと」




Broken heart limited
(また優しい君に甘えてる)