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そろそろパソコンを買い換えようと思っている。大学生になってから、論文を書く事が増始めた頃こんなに大変なんだと思い知らされたのもいい記憶だった。あと書式が43字40行11ポイントってなんなの。
パソコンにはそこまで詳しくはない。電車の中で小さなパソコンに打ち込めるならそれでもいいし。要は今までのパソコンのようにフリーズしなければ、なんでも良かった。駅前の電気屋はその点で便利だった。近場で、いろんな種類もあるし、パソコン機器が本当に好きなんだろう、店員さんもよくわからないところまで説明してくれる。説明されると「あぁ」とか「ですよね」などといいながら頷くから、理解してると思われてしまうのだろう。知ったかは便利だがこんなところで知らないと言えない自分は本当に嫌だ。無知は罪である。専門的なことにそれは反映されないでしょうに、と自分で思ってみるのだが事態は好転などしない。店員さん、もういいんです。日本語でいいです。よくわからない単語とか単位とか飛び交いすぎです。

「あ、もう少し見て回ります」

店員さんの話を区切って言うと店員さんはにこやかに去って行った。にこやかに、というのは怖い。不快にさせない為とはわかっているけれど、こちらも無理して笑っている分、腹の探り合いのような騙し合いのような気さえする。深く考えない方が良いというのはわかっているが。

「名前さんじゃないすか!お久しぶりッス!」

フラフラとその大きなフロアを何も考えずに歩いていたら明るい声がした。弟の友達の赤也くんだった。学校帰りだろうか、テニスバックを背にぴょこぴょこはねる髪を揺らしながらこちらに駆けてきた。

「久しぶり、赤也くん。」
「大学の帰りっすか?」
「んー、まぁそうなるかな。パソコン買い替えたくて」
「パソコンっすか?」
「家のがちょっと危なくなってきたから」
「古いとすぐ固まりますよねー。うちも買い替えてくんねーかなぁ」
「頼んでみたら?」
「いや、たぶん無理っす。今のままで十分って言われるっすよ」

へへ、と笑ってみせる赤也くんの笑顔はいい。可愛らしくて、それで癒される。人懐こいとでもいうんだろうか。さっきの店員よりもこっちの方が断然いい。私もつい頬がゆるんでしまう。可愛いなぁ。

「赤也ー、行くぜ!赤也!」

不意に向こうで赤也くんを呼ぶ声がした。そちらをみてみれば同じようにテニスバッグを肩に背負った子達がいた。「今行くっス!」と赤也くんが返事したということは先輩なんだろう。その先輩たちは私がいたのに気づかなかったらしく、目が合うと気まずそうな顔をした。邪魔をしてしまったと思ったんだろうか。

「じゃ、また今度ゆっくり話しましょ、名前さん!」
「そうだね。学校、頑張ってね」
「はい!」

駅の方面に向かって歩く赤也くんを見送って再びパソコンが並ぶ棚を見る。昔に比べてだいぶ進歩したんだろう、液晶は信じられないほど綺麗になっている。陶酔しそうなほど、なんて言ったら大袈裟かもしれないけれど、本当に綺麗なのだ。その便利な芸術品を品定めしていると、携帯が震えた。メールだ。手にとって内容を確認する。
送り主は先程会った赤也くんからだった。何か言い忘れたのかな。

『今日の名前さん大人っぽくて綺麗だったすよ!あといつ空いてるかあとでメールするっす!』

ばっかやろー。何可愛いこと言ってくれちゃってんの。ていうかあとでメールするって旨をメールで言っちゃうとかどうなの。この前、年下は好みじゃないとか友達に言ってごめんなさい。可愛いです。すごくかわいいです。もう抱きしめたい。撫で回したい…!







「…という夢をみたんだ。」
「いくら赤也が好きだからってそれはないわ」
「だよね」

夢の内容を弟に話したら、ドン引きされた。でも現実でもそう変わったもんじゃない。懐いてくれてるのは確かだし。メアド持ってるし、たまに話すし。
ただ、私の下心には、気づいてないだろうけど。



鐘愛の君
(可愛くてたまんない)




お題:駅 パソコン 論文

ちょっと変態な文章が出来上がったことに私も内心驚いています